9.4 QMSの構築手順とポイント
QMS(品質マネジメントシステム)の構築は、医療機器企業にとって製品の品質と安全性を確保するための基盤となります。特にスタートアップ企業にとっては、効率的かつ効果的なQMS構築が重要です。
QMS構築の基本手順は以下の通りです:
- 現状分析と計画
- 組織の現状診断
- 適用範囲の決定
- プロジェクトチームの編成
- 構築スケジュールの策定
- 品質方針・目標の設定
- 経営理念に基づく品質方針の策定
- 測定可能な品質目標の設定
- 組織内への周知と理解促進
- プロセスの特定と設計
- 主要プロセスの特定
- プロセス間の相互関係の明確化
- プロセスオーナーの任命
- パフォーマンス指標の設定
- 文書体系の整備
- 品質マニュアルの作成
- 手順書・指示書の作成
- 記録様式の設計
- 文書管理システムの構築
- 教育訓練の実施
- QMS概要の全社教育
- 職務別専門教育
- 内部監査員の育成
- QMSの運用
- 文書化したプロセスの実行
- 記録の維持管理
- パフォーマンスモニタリング
- 内部監査とレビュー
- 内部監査の実施
- 不適合の特定と是正
- マネジメントレビューの実施
- 継続的改善
- データ分析に基づく改善
- 是正・予防処置の実施
- システムの定期的見直し
QMS構築における重要なポイントは以下の通りです:
- トップコミットメント: 経営層の積極的関与が不可欠
- リスクベースドアプローチ: リスクに応じたリソース配分と管理
- プロセスアプローチ: 個別業務ではなくプロセス全体の最適化
- 実用性重視: 組織規模や製品特性に合わせた現実的なシステム
- 段階的構築: 優先度の高い領域から段階的に構築
- 文書の適正化: 過剰な文書化を避け、必要十分な文書体系
- ITツールの活用: 文書管理や記録維持の効率化
特にSaMD(Software as a Medical Device)開発企業では、ソフトウェア開発プロセスとQMSの統合が重要です。アジャイル開発などの柔軟な手法を採用しつつ、設計管理やバリデーションなどの規制要件を満たすバランスが求められます。