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9.3 ISO 13485認証取得プロセス

ISO 13485認証取得は医療機器メーカーにとって重要なマイルストーンであり、国内外の市場展開においても大きなアドバンテージとなります。認証取得プロセスは綿密な計画と準備が必要です。

9.3.1 認証取得の手順とスケジュール

ISO 13485認証取得の一般的な手順とスケジュールは以下の通りです:

  1. 準備段階(3〜6ヶ月)
    • プロジェクトチームの編成
    • ギャップ分析(現状と要求事項の差異分析)
    • 認証取得計画の立案
    • 経営層への説明と承認
  2. 構築段階(6〜12ヶ月)
    • 品質方針・品質目標の策定
    • QMS文書体系の整備
    • プロセスの確立と実装
    • 記録の維持管理体制の構築
  3. 運用・評価段階(3〜6ヶ月)
    • 内部監査の実施
    • マネジメントレビューの実施
    • 是正・予防処置の実施
    • システムの有効性評価
  4. 審査段階(2〜4ヶ月)
    • 認証機関の選定
    • 文書審査
    • 本審査(現地審査)
    • 指摘事項への対応
    • 認証取得

スタートアップ企業の場合、開発初期段階からISO 13485の要求事項を意識した体制構築を行うことで、認証取得までの期間を短縮できる可能性があります。

9.3.2 必要な文書体系

ISO 13485に基づくQMS文書体系は一般的に4階層で構成されます:

  1. 第1階層:品質マニュアル
    • 品質方針
    • 組織体制
    • プロセス間の相互関係
    • QMSの全体構造
  2. 第2階層:手順書
    • 文書管理手順書
    • 記録管理手順書
    • 内部監査手順書
    • 不適合管理手順書
    • 是正処置手順書
    • 予防処置手順書
    • 設計管理手順書(SaMD開発に特に重要)
    • リスクマネジメント手順書
  3. 第3階層:作業指示書
    • 詳細な作業方法
    • チェックリスト
    • フローチャート
    • 技術基準
  4. 第4階層:記録
    • 品質記録
    • 審査記録
    • 設計記録
    • トレーニング記録

SaMD開発企業の場合、ソフトウェア開発ライフサイクルを規定する文書(IEC 62304に準拠)や、サイバーセキュリティ管理に関する文書も重要となります。

9.3.3 審査対応のポイント

ISO 13485認証審査を円滑に進めるためのポイントは以下の通りです:

  1. 経営層の関与
    • 経営層自身がQMSの目的と重要性を理解
    • マネジメントレビューへの積極的参加
    • 必要なリソース確保へのコミットメント
  2. 実態に即したシステム構築
    • 過剰な文書化を避け、実際の業務に即したシステム構築
    • 既存のプロセスを活かした効率的なQMS
    • 組織規模に適したアプローチ
  3. 教育訓練の徹底
    • 全従業員へのQMS教育
    • 内部監査員の育成
    • 審査対応者への模擬審査の実施
  4. 審査への準備
    • 過去の監査指摘事項の是正完了確認
    • 必要な記録の整理と事前確認
    • 各部門責任者の役割明確化
  5. 審査機関とのコミュニケーション
    • 審査機関の選定(業界経験、専門性を考慮)
    • 審査範囲・スケジュールの調整
    • 予備審査の活用

特にスタートアップ企業では、過剰な文書化による業務非効率を避けつつ、必要十分なQMSを構築することが重要です。ベンチャー企業の特性である俊敏性を損なわずに、適切な品質管理を実現するバランスが求められます。