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5.7 一般医療機器の申請準備

一般医療機器は、医療機器の中でもリスクが最も低いクラスⅠに分類される製品です。申請手続きも比較的簡素化されており、スタートアップ企業にとって参入しやすい領域と言えます。ここでは、一般医療機器の申請準備に必要な事項を解説します。

一般医療機器の特徴

一般医療機器は以下の特徴を持ちます:

特徴内容
クラス分類クラスⅠ(最もリスクが低い)
申請形態製造販売届出(承認・認証ではない)
審査プロセス原則として審査なし(形式的な確認のみ)
QMS適用範囲限定的(基本的な製造管理・品質管理のみ)
市販後安全管理最低限の安全管理体制

届出に必要な書類

一般医療機器の製造販売届出には、以下の書類が必要です:

  1. 製造販売届出書(正本1通、副本1通)
  2. 添付資料(製造販売届出書の内容を裏付ける資料)
    • 製品の外観写真
    • 製品の構造・原理
    • 原材料
    • 性能及び安全性に関する規格
    • 使用方法
    • 製造方法
    • 備考(類似医療機器との差分説明等)

申請準備のステップ

一般医療機器の申請準備は、以下のステップで進めます:

1. 一般医療機器であることの確認

開発する製品が本当に一般医療機器(クラスⅠ)に該当するかを確認します。判断が困難な場合は、PMDAの一般相談や簡易相談を活用しましょう。

確認方法:

  • 「医療機器の一般的名称と分類」の確認
  • 類似製品のクラス分類の調査
  • 必要に応じてPMDAへの相談

2. 製品仕様の明確化

製品の仕様を明確にし、届出書に記載する内容を整理します:

  • 一般的名称の決定
  • 販売名の決定
  • 製品の構造・原理の整理
  • 原材料の特定
  • 製品の外観・寸法
  • 性能及び安全性に関する規格の設定
  • 使用方法の明確化
  • 製造方法の整理

3. 必要な試験の実施

一般医療機器であっても、製品の安全性・有効性を確認するための試験が必要です:

  • 性能試験:製品の基本性能を確認する試験
  • 安全性試験:必要に応じて電気的安全性、生物学的安全性などの試験
  • 安定性・耐久性試験:製品の寿命を確認する試験

4. 添付文書(取扱説明書)の作成

製品の使用者向けの添付文書を作成します。最低限、以下の内容を含める必要があります:

  • 警告・禁忌・注意事項
  • 使用目的または効果
  • 操作方法または使用方法
  • 保管方法および有効期間
  • 製造販売業者の情報

5. 届出書類の作成

届出書と添付資料を作成します:

  • 製造販売届出書:所定の様式に従って記入
  • 添付資料:製品の詳細情報を記載した資料

6. 製造販売業許可の取得

一般医療機器の製造販売には、第三種医療機器製造販売業許可が必要です:

  • 第三種医療機器製造販売業許可の取得
  • 総括製造販売責任者の設置

7. 製造業登録(必要な場合)

自社で製造する場合は医療機器製造業登録が必要です:

  • 医療機器製造業登録の取得
  • 製造管理責任者の設置

一般医療機器の申請における注意点

クラス分類の確認

製品がクラスⅠと判断したとしても、安易に一般医療機器として届出を行わないようにしましょう。類似製品の調査や、必要に応じてPMDAへの相談を活用し、適切なクラス分類を確認することが重要です。

製品の使用目的の明確化

使用目的によってクラス分類が変わることがあります。製品の使用目的や効果を明確にし、それに合ったクラス分類を確認しましょう。

海外展開を見据えた開発

海外展開を視野に入れている場合、国内ではクラスⅠでも、海外では上位クラスに分類される可能性があります。早い段階から海外の規制も調査しておくことをお勧めします。

QMS体制の整備

一般医療機器であっても、基本的な品質管理体制は必要です。以下のポイントを押さえましょう:

  • 設計管理記録の保持
  • 製造工程の管理手順の確立
  • 製品検査の実施と記録
  • 苦情処理システムの構築

製品ライフサイクル管理

市販後の安全管理体制も整備する必要があります:

  • 不具合情報の収集体制
  • 安全性情報の評価手順
  • 必要に応じた改善措置の実施手順

スタートアップ企業のための効率的な申請準備

限られたリソースで効率的に申請準備を進めるためのポイントです:

  1. 既存の一般的名称の活用:できるだけ既存の一般的名称に当てはまる製品設計にすることで、申請の複雑さを軽減できます。
  2. 既存の規格・基準の活用:JIS規格やISO規格など、既存の規格・基準に適合する製品設計にすることで、追加試験の必要性を最小限に抑えられます。
  3. 外部リソースの活用:必要に応じて、医療機器コンサルタントや試験機関などの外部リソースを活用しましょう。
  4. シンプルな初期製品:最初の製品はできるだけシンプルな設計にし、市場に出した後の反応を見てバージョンアップを検討する戦略も有効です。

一般医療機器は参入障壁が比較的低いため、スタートアップ企業にとって良いスタート地点となります。しかし、医療機器である以上、適切な規制遵守と品質管理が不可欠です。この点を念頭に置いて、計画的に申請準備を進めてください。