2.2 医療機器のクラス分類
医療機器は、人体へのリスクの程度に応じて4つのクラスに分類されています。この分類は国際的にも整合性が取られており、日本でもこの分類に基づいて規制の厳しさが決定されます。
クラス分類の概要
クラス | リスクレベル | 一般的名称 | 規制区分 | 上市前手続き |
---|---|---|---|---|
クラスⅠ | 最も低いリスク | 一般医療機器 | 届出 | 届出 |
クラスⅡ | 比較的低いリスク | 管理医療機器 | 認証/承認 | 認証(基準あり)<br>承認(基準なし) |
クラスⅢ | 比較的高いリスク | 高度管理医療機器 | 認証/承認 | 認証(基準あり)<br>承認(基準なし) |
クラスⅣ | 最も高いリスク | 高度管理医療機器 | 承認 | 承認 |
クラス分類の基準と考え方
クラス分類は主に以下の要素によって決定されます:
- 侵襲性:体内への侵入度合い
- 使用期間:人体に接触する時間
- 使用部位:使用される人体の部位(中枢神経系、循環器系など特に重要な部位での使用はリスクが高い)
- エネルギー使用:電気や放射線などのエネルギーを使用する場合
- 生命維持・救命:生命維持や救命に使用される場合
クラス別の医療機器の具体例
クラスⅠ(一般医療機器)の例:
- 聴診器、舌圧子、手術用手袋
- 単純X線フィルム、医療用ベッド
- 歯科用印象材、医療用照明器
クラスⅡ(管理医療機器)の例:
- 電子血圧計、電子体温計
- MRI装置、X線診断装置
- 超音波診断装置、歯科用ユニット
- 家庭用低周波治療器
クラスⅢ(高度管理医療機器)の例:
- 人工関節、人工骨
- コンタクトレンズ(長期使用)
- 透析器、人工呼吸器
- 非吸収性縫合糸
クラスⅣ(高度管理医療機器)の例:
- 人工心臓弁
- 埋め込み型ペースメーカー
- 冠動脈ステント
- 脳動脈瘤クリップ
クラス分類と規制の関係
クラス分類によって、以下の規制要件が異なります:
- 上市前手続き:
- クラスⅠ:届出のみ
- クラスⅡ・Ⅲ(基準あり):第三者認証機関による認証
- クラスⅡ・Ⅲ(基準なし)・Ⅳ:PMDAによる承認
- 製造販売業許可の種類:
- クラスⅠ:第三種医療機器製造販売業許可
- クラスⅡ:第二種医療機器製造販売業許可
- クラスⅢ・Ⅳ:第一種医療機器製造販売業許可
- QMS要求事項: クラスが上がるほど要求事項が厳格化
- 市販後調査・監視: クラスが上がるほど要求される市販後の安全管理体制が厳格化
クラス分類の判断方法
医療機器のクラス分類を判断するためのリソース:
- PMDAのホームページ:一般的名称とクラス分類の対応表
- 類似医療機器の参照:既存の類似品のクラス分類を参考にする
- 厚生労働省通知:「医療機器の製造販売承認申請等に関する取扱いについて」
- PMDA相談制度:開発前相談や申請前相談を活用
スタートアップ企業向けのクラス分類戦略
- 開発初期のクラス分類検討:開発初期段階で想定されるクラス分類を検討し、必要な規制対応を計画する
- 段階的アプローチ:より低いクラスの製品から開始し、経験を積んだ後に高いクラスの製品へ展開する戦略も検討
- クラス分類の境界線にある製品の注意点:クラスの境界線にある製品は、PMDAや第三者認証機関への事前相談を活用して正確なクラス分類を確認
- 国際展開を見据えたクラス分類の考慮:日本と海外(米国FDA、EU MDRなど)でのクラス分類の違いを把握し、グローバル戦略に反映させる
クラス分類は医療機器開発における最も基本的な規制枠組みであり、製品コンセプト段階から適切に検討することが、効率的な開発と上市につながります。