
国際規格の体系について
国際標準化機構(ISO)や国際電気標準会議(IEC)は、国際規格を定める主要な機関として、グローバルな産業活動や技術開発の基盤を支えている。
これらの国際規格は、その目的や対象によって複数の分類方法が存在する。
従来から広く知られている三つの分類として、
- プロセス規格
- 安全規格
- マネジメント規格
がある。
プロセス規格
プロセス規格は、製品やサービスの製造工程、作業手順、測定方法などの方法論を規定するものである。
例えば、医療機器ソフトウェアのライフサイクルプロセスを定めたISO 14971、IEC 62366-1、IEC 62304などが該当する。
ISO 14971は主に安全規格として分類されるが、プロセス規格の要素も含んでいる。
【安全規格としての側面】
ISO 14971は医療機器のリスクマネジメントに関する主要な製品安全規格である。この規格の主な目的は、医療機器の安全性と性能を確保することである。
【プロセス規格としての側面】
同時に、ISO 14971はリスクマネジメントのプロセスを規定している。この規格は、医療機器のライフサイクル全体を通じてリスクを管理するための体系的なアプローチを提供する。

安全規格
安全規格は、人命や健康、環境の保護に関わる要求事項を定めたものである。
安全規格については、
- A規格(基本安全規格)
- B規格(グループ安全規格)
- C規格(製品安全規格)
という階層構造も存在する。
A規格は基本概念や原則を定め、B規格は広範な機械や設備に共通する安全性を規定し、C規格は特定の機械に関する詳細な安全要求事項を定めている。例えば、機械安全に関するISO 12100や電気安全に関するIEC 60601シリーズなどが代表例として挙げられる。


マネジメント規格
マネジメント規格は、組織の運営や管理の方法を体系化したものである。
品質マネジメントシステム(ISO 9001)を始め、環境マネジメントシステム(ISO 14001)、情報セキュリティマネジメントシステム(ISO/IEC 27001)に加え、労働安全衛生に関するISO 45001や食品安全に関するISO 22000なども重要なマネジメント規格として位置づけられている。
特に医療機器産業においては、ISO 9001を基礎としながらも、医療機器の特殊性を考慮した品質マネジメントシステム規格であるISO 13485が重要な役割を果たしている。
この規格は医療機器の設計開発、製造、設置、サービス提供までの全過程における品質マネジメントシステムの要求事項を規定しており、多くの国で医療機器の規制要件として採用されている。

これらの規格は独立して存在するのではなく、複雑な相互関連性を持っている。例えば、情報セキュリティの分野では、ISO 27001(マネジメントシステム要求事項)とISO 27002(管理策)が密接に関連し合い、包括的な管理体系を形成している。また、製造業においては、プロセス規格、安全規格、マネジメント規格を組み合わせて運用することで、総合的な品質保証と安全性確保を実現している。
国際規格は、技術の進歩や社会のニーズの変化に応じて定期的に見直しが行われ、必要に応じて改訂される。
このような継続的な更新プロセスによって、規格の有効性と時代適合性が維持されている。
さらに、これらの国際規格は、国際貿易の技術的障壁を取り除き、グローバルな市場での公平な競争を促進する重要な役割を果たしている。異なる国や地域で同じ規格が採用されることで、製品やサービスの互換性が確保され、国際取引の円滑化に貢献している。