なぜALCOAが重要か
ALCOAは製薬業界におけるデータインテグリティを確保する上で非常に重要な原則である。その理由は以下の通りである。
- データの信頼性を保証する
ALCOAの各要素(帰属性、判読性、同時性、原本性、正確性)を満たすことで、データの信頼性と完全性が担保される。これは医薬品の安全性と品質を保証する上で不可欠である。 - 規制当局の要求事項
FDAやEMAなどの規制当局がALCOA原則に基づいたデータ管理を求めているため、これに準拠することが必要不可欠となっている。 - データの追跡可能性を確保する
ALCOAに従うことで、データの生成から廃棄までのライフサイクル全体を通じて、データの追跡可能性が確保される。これは問題発生時の原因究明や品質管理に重要である。 - 査察対応の基準となる
規制当局による査察において、ALCOA原則への準拠が重要な評価基準となっている。適切に対応することで、査察をスムーズに通過できる。 - グローバル化への対応
国際的な標準化が進む製薬業界において、ALCOAはグローバルに認知された基準であり、これに準拠することでグローバル市場での競争力を維持できる。 - 医薬品の安全性担保
ALCOAに基づいたデータ管理は、最終的に安全で品質の高い医薬品を提供することにつながり、患者の安全を守ることに貢献する。
ALCOAの原則は、紙媒体の記録にも電子記録にも適用される。
ALCOAとは
Attributable(帰属性)
記録を「誰が」「いつ」作成したのかが明確でなければならない。例えば、薬を作るときの温度を測定した場合、その記録には測定した人の名前と日時を必ず書く必要がある。これは、後から確認が必要になったときに、すぐに担当者に連絡できるようにするためである。
Legible(判読性)
記録は誰が見ても読めて理解できる必要がある。走り書きや略字で書かれた記録は、他の人が読めない可能性があり、危険である。例えば、「37℃」という温度を「3.7」と間違えて読んでしまうようなことがあってはならない。
Contemporaneous(同時性)
作業をしたらすぐに記録を取らなければならない。例えば、朝9時に測定した温度を、夕方5時になってから思い出して書くことは許されない。人の記憶は時間とともに曖昧になるため、測定したらすぐにその場で記録を取ることが重要である。
Original(原本性)
記録は原本を保管しなければならず、コピーや書き写しで済ませてはいけない。また、記録の修正が必要な場合は、元の記録が読めるように二重線で消し、訂正印を押すなどの適切な方法で修正する必要がある。
Accurate(正確性)
記録は事実を正確に反映していなければならない。例えば、測定値が基準値から外れていた場合でも、基準値内に収まるように数値を調整して記録することは絶対に許されない。