クリティカルシンキングとは

クリティカルシンキングとは

今、米国ではロジカルシンキングと並んで、クリティカルシンキングが注目されている。
日本語では「批判的思考」と訳される。しかしながら、何でも否定するということではない。
クリティカルシンキングで重要なことは、思い込みを排除し、前提条件を疑ってかかるということである。
そのためには、目的は何かを常に意識し、客観的に考えることが必要だ。
思い込み、偏見、既存の価値観を排除し、他の要因を考えなければならない。
つまり、常に問い続けて、考え続けて、これがベストかを考えるのである。
クリティカルシンキングが出来ない人の特徴として、頑固な人、すぐに他人の意見を鵜のみにする人などがあげられる。

「スコッティ」のデザインはクリティカルシンキングにより決められた

山陽スコット社(当時)は、ティッシュペーパー「scottie」のパッケージリニューアルのために、世界各国からおよそ20人ものデザイナーを集めて、国際コンペを開催した。
デザインの前提条件として「花柄であること」と「与えられたロゴを使うこと」が決められた。
コンペ参加者の松永 真氏は「シンプルで何一つモノを置いていない部屋なら花柄でもいい。でも、ゴチャゴチャした部屋の中で生活用品として使うティッシュペーパーが花柄だったら邪魔だ。」と考えた。
自分でも欲しいと思えるのは、部屋の片隅にソーッと置けるくらいの、シンプルな真っ白い箱だった。
さらに山陽スコットが用意していたロゴは、とてもそのようなものではなかった。そこで、松永 真氏は一からロゴを作り直した。
ティッシュペーパーが持たなければならない「やさしさ」や「なめらかさ」を持つ柔らかいロゴにした。
これが、現在の「scottie」のパッケージとなっている。 前提条件である「花柄であること」と「与えられたロゴを使うこと」の両方を排除し、本来のティッシュペーパーのパッケージはどうあるべきなのかを、クリティカルシンキングによって考えたのである。

FDAの期待

FDAは「品質の悪い製品を市場に出すことを恐れるのではなく、査察での指摘を恐れて、あまりにも多くの作業が行われている。」と感じている。
企業の多くは、FDA査察におけるフォーム483による指摘やWarning letterやサードパーティコンサルタントから指摘を回避しようとしている。
しかしながら、当局の指摘を恐れてすべきことなど何もない。
そうではなく、クリティカルシンキングを用いて、患者の安全と製品の品質に対する適切なリスクベースの品質保証に焦点を当てる必要がある。
FDAの調査によると、適切なリスクマネジメントを実施している企業ほど品質が良いといことである。
そういった企業ほど、苦情・回収が少なく、そのため品質保証部門の人数が少ないのである。


なぜ当局は基準を定めないのか

従前のように、規制要件やガイドラインが“基準”を定めることは少なくなった。
今後は、リスクベースドアプローチによって、企業が自ら“基準”を定めなければならない。
与えられた基準を遵守するのではなく、患者の安全性・製品の品質を担保するためには、本来何が重要であるかを自らが考える必要がある。
FDAは次のように期待している。

製薬企業の従業員は自社製品のプロフェッショナルである。また当該プロセスのエキスパートである。
製品にどの程度のリスクがあり、当該プロセスにどの程度のリスクがあるかは、FDAの査察官よりも担当者の方が詳しいはずである。
当局からではなく、自らがリスクに相応した“基準”を決めて品質保証を実施するべきである。(リスクベースドアプローチ)
FDAは、査察官に当該品質保証のレベルを正当化できる根拠を持って説明して欲しいと考えている。


クリティカルシンキングは、どこにリスクをもたらす可能性があるのか、製品またはプロセスのリスクとは何かを検討することである。
企業はFDA査察官に対して根拠のある説明をすることができること、つまり、製品と当該プロセスについて理解し、制御する要素を持っていることを示すこと。
FDAは、企業が当該プロセスを本当に理解していること、そして企業が自ら管理していることを知りたがっている。 リスクがどこに潜んでいるのかを知っていることを、FDA査察官に伝えることができることが重要である。

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