ISO 13485の認証取得・遵守は必須か
ISO 13485の認証取得は必須か
筆者はしばしば医療機器のスタートアップ企業などから、ISO 13485の認証取得の支援コンサルテーションを依頼される。
しかしである。日米欧においてはISO 13485の認証取得は必須ではない。
ただし、国によってはISO 13485等の認証取得を医療機器承認申請の条件としている場合があるので、注意が必要である。
日本の場合、QMS省令に適合してQMSを構築・運用していれば良く、米国の場合は21 CFR Part 820 QSRなどに準拠してQMSを構築・運用していれば良い。
本邦においては、ISO 13485の認証を取得していれば、品目申請時の実地調査が軽減(または免除)されることがあり、ISO 13485の認証を取得するメリットはある。
欧州においてもISO 13485の認証取得は必須ではない。
なぜならば、欧州のCEマーキング制度は自己宣言であるためである。
EN ISO 13485を遵守して医療機器の設計・製造を実施している旨を適合宣言書として自己宣言すれば良いのである。(ただし、多くの医療機器は第三者認証機関の認証が必要である。)
各国における国際規格の取り扱い
本邦においては、ISO/IEC等の国際規格は、JISに取り込まれた後に省令や基本要件基準に採用される。
2021年に改正されたQMS省令は、JIS Q 13485:2018に基づくものである。
米国においてはそもそもISOに対する認証は官民ともに関心が薄い。
ただし、FDAがConsensus Standard(認知規格)としてISO/IECを指定することがある。
FDAは現在、QSRをISO 13485に整合させ、QMSR(Quality Management System Regulation)として改定することを発表している。
しかしながら、FDAはこれまでISO 13485をConsensus Standardとして認めて来なかった歴史がある。
欧州においては、ISO/IECは、日本におけるJIS規格と同様にEN ISO/IEC(EN規格)に取り込まれる。
ENとはEuropean Normのことである。Normはノルマのことで達成すべき基準のことである。
一般に国際規格は各国で本文や付属資料を改訂することは許されていない。
EN規格には国際規格に関するEU独自の付属書であるAnnex Zsが付随することがある。
Annex Zsには、規格要求事項への適合が、MDR等の規制要求事項への適合となるか否かを明示した情報や、規格要求事項とMDR等の規制要求事項の差分が示される場合もある。
EU MDR遵守の上では、EN規格のAnnex Zsの確認が非常に重要である。
MDR(欧州医療機器規制)における整合規格とは
MDRでは、欧州整合規格(機器が整合規格に準拠して採択した国家規格)またはCommon Specification(CS:共通仕様)に適合しているならば、安全性と性能の要求事項(GSPR)に適合しているとみなされる。
GSPRを満たすことを示す上で、もし適用可能な欧州整合規格またはCSがある場合は、それを使用することがほぼ必須である。
適用可能な欧州整合規格があるかどうかは、欧州整合規格のリストにより、製造業者として調査する必要がある。
2022年1月4日付で新たに9つの規格が欧州整合規格として認定され、EN ISO 13485:2016がMDRの整合規格となった。実にMDR施行後5年経ってからのことである。
なお、欧州MDRの下で認定された整合規格は2022年6月時点で16規格である。
整合規格に準拠するメリット
欧州整合規格への準拠は「Voluntary」とされている。
欧州整合規格に準拠することのベネフィットは「関連する法的要件への適合が推定(presumption)される」ことである。
製造業者は、欧州整合規格以外の規格(整合規格化されていないEUの規格、その他の国際規格等)を自主的に選択することも可能である。
ただし、適用可能な欧州整合規格があるにもかかわらず、他の方法でGSPRへの適合性を証明(法規へのコンプライアンスを証明)する場合は、少なくとも、該当の欧州整合規格の内容を調査した上でそれと同等以上の安全性を保証していることをエビデンスに基づいて説明できることが求められる。