6.4 基本要件への適合性証明における一般的な留意点
医療機器の基本要件への適合性証明は承認申請の重要な要素です。ここでは、スタートアップ企業が適合性証明を行う際の一般的な留意点について解説します。
6.4.1 規格・基準の活用方法
基本要件基準への適合性を証明する最も効率的な方法は、整合規格(JIS規格)や国際規格(ISO/IEC規格)を活用することです。
規格活用のポイント:
- 整合規格への適合は「推定適合」として扱われ、基本要件の該当項目への適合と見なされる
- 規格の最新版を確認し、適用する規格の版数を明記する
- 部分適用の場合は、適用範囲を明確にする
規格活用の利点 | 内容 |
---|---|
効率化 | 既に確立された試験方法や評価基準を利用できる |
信頼性向上 | 国際的に認知された基準に基づく証明は審査でも評価が高い |
審査の迅速化 | 規格適合の証明により審査対応がスムーズになる |
6.4.2 社内規格の設定と基本要件の関係
医療機器企業は自社製品の特性に応じた社内規格を設定し、基本要件への適合性を証明する必要があります。
社内規格設定の重要ポイント:
- 国際規格や業界標準を参考に、自社製品に適した規格を設定
- 社内規格と基本要件基準の対応関係を明確にする
- 社内規格の妥当性の根拠を示す資料を準備
6.4.3 リスク管理と基本要件適合性の関係
基本要件への適合性証明とリスク管理(ISO 14971)は密接に関連しています。多くの基本要件項目は「リスク許容範囲内であること」を求めており、適切なリスク管理プロセスの実施が必要です。
リスク管理と基本要件の連携:
- リスクアセスメントの結果を基本要件適合性の証拠として活用
- リスクコントロール手段と基本要件の対応関係を明確にする
- 残留リスクの受容可能性を基本要件の観点から評価
6.4.4 適合宣言書の作成方法
基本要件基準への適合性宣言書は、基本要件チェックリストと証拠資料の組み合わせにより構成されます。
適合宣言書作成の流れ:
- 基本要件チェックリストの各項目の該当性を確認
- 該当する項目ごとに適合方法と証拠資料を特定
- 証拠資料と基本要件の対応関係を明確にする
- 社内で適合宣言書のレビューと承認を実施
証拠資料の種類 | 具体例 |
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試験報告書 | 電気安全性試験、生物学的安全性試験、性能試験など |
規格適合証明書 | ISO/IEC規格への適合証明書、第三者認証書 |
設計文書 | 設計仕様書、設計検証報告書、設計妥当性確認報告書 |
リスク管理文書 | リスク分析報告書、リスクコントロール実施記録 |
製造工程文書 | 製造工程バリデーション報告書、工程管理記録 |
6.4.5 審査・照会対応でよくある指摘事項と対応方法
審査過程では基本要件適合性に関する照会事項が発生しますが、適切な準備と対応が重要です。
よくある指摘事項と対応策:
- 適合性証明の不足
- 対応策:事前に各基本要件項目に対する証拠資料を十分に準備し、チェックリストの記載を具体的かつ詳細にする
- 規格の適用範囲や版数の不明確さ
- 対応策:適用する規格の正確な版数と適用範囲を明記し、部分適用の場合はその理由と代替手段を説明
- リスク管理と基本要件の連携不足
- 対応策:基本要件チェックリストにリスク管理文書の該当箇所を明確に参照し、リスクコントロール手段と基本要件の関連を示す
- 証拠資料と適合宣言内容の不一致
- 対応策:適合宣言書作成前に証拠資料を精査し、基本要件の要求事項と一致していることを確認
- 同等品との差異に関する説明不足
- 対応策:後発医療機器の場合、同等性を示す証拠を明確に提示し、差異がある場合は基本要件への影響を説明
スタートアップ企業向けアドバイス:
- 基本要件適合性チェックリストの作成は開発初期段階から意識する
- 過去の類似製品の審査事例を参考にする
- 不明点はPMDA相談制度を積極的に活用する
- 社内の知識・経験が不足する場合は、コンサルタントなど外部リソースの活用を検討する
適切な基本要件適合性証明は承認審査をスムーズに進めるための鍵であり、開発初期から計画的な取り組みが重要です。