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第1章 改正の経緯

1.1 CFRとは

CFRとはCode of Federal Regulations(連邦行政規則集)である。米国には50ものCFRが存在しており、その第21分冊がFood and Drug、すなわちFDAが受け持っている。21 CFRにはPartが1から1,499まで用意されており、それぞれカテゴリーによって区別されている。800番台が今日の医療機器の章である。今日ご紹介する820を中心に説明するが、820だけでは遵守ができず、803、806、821等の他の章も関連してくる。

CFRの他にも、FDAはGuidanceを発行することがある。Guidanceは、CFRの下位に位置し、業界向けガイダンス(Guidance for Industry)とFDA職員向けガイダンス(Guidance for Staff)の2種類がある。Guidanceの内容はあくまでもFDAの推奨事項であり、代替方法の採用は構わないと記載されていることが多い。

1.2 連邦広報によるFDAの規則公示の手順

FDAが規則を発効させるまでには、段階的なプロセスが必要である。第一段階として「規則制定の事前通告」を行い、第二段階として「規則案の通告」とパブリックコメントの募集を行う。このパブリックコメントの募集は少なくとも90日間行われる。最終段階では「最終規則の公示」を行い、パブリックコメントへの回答と規則の発効日を通告する。

規則案を連邦広報に公示しても、案に対する反対が多くて最終規則にまで至らないことや、ボツになることもあり、規則がいつまでも実現しない場合もある。米国では、政府の規則立案にあたっては、透明性を求められる。日本においては、米国にはない「行政指導」というものがあり、政府機関は要事にすぐさま対応することができる。しかし米国でこうした行政指導的なアプローチを取ろうとすれば、即座に訴訟となる可能性が高い。

1.3 Part 820(QSR)改正の経緯

QSRは1996年10月7日に現行の規則が発効されて以降、20年以上にわたり米国における医療機器品質システム規制として機能してきた。この間、軽微な修正はあったものの、改定は一度も実施されてこなかった。

FDAがQSRによる規制を実施する一方で、品質システム規制に対する当局の期待は時代とともに変化し続けてきた。日本や欧州、カナダといった多くの国の規制当局は、医療機器の品質システムに関するマネジメント規格であるISO 13485を品質システム規制として取り入れている。

1.4 ISO 13485の進化とQSRとの類似性の高まり

一方で、ISOは1996年にISO 9001の適用に関連し、医療機器の設計/開発、および関連する場合は設置およびサービスのためにQMS要求事項を指定する自主的な合意基準として、ISO 13485の最初のバージョンである「品質システム-医療機器-ISO 9001の適用に関する特定の要求事項」を発行した。時間の経過とともに、当該規格が医療機器専用のQMS要求事項を規定したISO 13485に進化していった。

ISO 13485は、改定を重ねるにつれ、Part 820の要求事項とより整合し、類似するようになった。特にISO 13485の2016年版がPart 820 QSRと良く類似・整合している。FDAはISOのこの進歩を認識し、ISO 13485のQMS要求事項を明示的に組み込むために現在のPart 820規制を改正することを提案することとなった。また、ISO 13485は、製造業者に対するQMS要求事項の基盤として、あるいはその国のQMS要求事項として、多くの規制当局によって国際的に使用されており、FDAおよび他の4か国の規制当局が参加する医療機器単一監査プログラム(MDSAP)のような規制の調和プログラムにも使用されている。

1.5 FDAの国際調和のための努力

FDAは長きにわたり、医療機器の規制のためのグローバルな調和の価値を認識し、その効果を高める方法を模索してきた。たとえば、FDAは、リスクマネジメントシステムのQMSへの統合について概説する、2005年5月20日付けのGHTFガイダンスドキュメント「品質管理におけるリスクマネジメントの原則と活動の実施」を含むリスクマネジメントに関する国際的に調和した文書と標準の開発に積極的に参加してきた。FDAはまた、ISO 14971「医療機器-医療機器へのリスクマネジメントの適用」のさまざまなバージョンの開発にも参加してきた。2012年には、FDAは製造業者のISO 13485:2003監査報告書の受入プログラムを開始し、このプログラムを通じて、QSRによる規制要求をカバーするFDAの定期検査の代わりに、ISO 13485監査レポートの受入を実現した。

1.6 FDAの国際調和のための努力-MDSAPへの参加

さらに、FDAは、規制の調和および収束に焦点を当てた世界中の医療機器規制当局の自主的なグループである国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)に参加している。IMDRFは2012年にMDSAP(医療機器単一監査プログラム)を開発した。MDSAPにおいては、監査はISO 13485要求事項を核に、各国固有の要求事項を追加したものに基づいて実施される。FDAは、MDSAPに参加するかどうかの検討や、およびMDSAPに参加するに当たって米国に必要なFDA固有の要求事項の規定を決定する際に、ISO 13485およびPart 820の徹底的なレビュと比較を実施した。その結果、MDSAPの監査モデルに追加する必要のあるFDA固有の要求事項はごくわずかであると結論付け、現在のPart 820とISO 13485が非常に類似していることが明らかとなった。これにより、FDAはMDSAPに参加し、医療機器品質システムのFDA独自の定期的な監視の代わりにMDSAP監査結果の受け入れができるようになった。