11.3 保険適用申請のプロセス
保険適用申請は、医療機器の市場導入において収益性確保のための重要なステップです。日本では、厚生労働省の定めたプロセスに沿って適切に申請を行う必要があります。
保険適用申請の基本的な流れ
- 薬事承認の取得
- 保険適用申請の前提条件
- PMDAの審査を経て製造販売承認を取得
- 区分の選択と申請準備
- A1~A3:既存機能区分への当てはめ
- B1~B3:既存機能区分への当てはめ(補正加算あり)
- C1・C2:新機能区分の設定を伴う申請
- 申請書類の作成と提出
- 保険適用希望書
- 医療機器の概要資料
- 臨床および経済性データ
- 類似機能区分との比較資料
- 中医協での審議
- 保険医療材料等専門組織による検討
- 機能区分、価格の審議
- 必要に応じた企業からのヒアリング
- 官報告示と保険適用
- 厚生労働省告示の公示
- 医療機関への情報提供
- 保険請求開始
申請区分による違い
各申請区分によって申請プロセスや必要書類、審査のタイムラインが異なります。
A1~A3区分(既存機能区分)
- 比較的シンプルな申請手続き
- 原則、四半期ごとの申請機会(年4回)
- 申請から収載まで約3か月程度
B1~B3区分(既存機能区分+補正加算)
- 画期性加算、有用性加算等の補正加算を伴う
- より詳細な有用性データの提出が必要
- 申請から収載まで約6か月程度
C1・C2区分(新機能区分)
- 最も複雑な申請プロセス
- 詳細な臨床データ、経済性評価が必要
- 原則、半年に1回の申請機会(年2回)
- 申請から収載まで約9か月~1年程度
申請戦略のポイント
- 事前の情報収集と分析
- 類似製品の保険収載状況調査
- 適切な機能区分の検討
- 想定される償還価格の試算
- 関係者との事前相談
- 厚生労働省経済課への相談
- 業界団体を通じた情報収集
- 必要に応じた専門コンサルタントの活用
- エビデンスの戦略的準備
- 類似製品との差別化ポイントの明確化
- 経済性評価(費用対効果)データの準備
- 医療上の有用性を示す臨床データの整理
- 申請タイミングの最適化
- 薬事承認取得時期との調整
- 診療報酬改定サイクルの考慮
- 市場導入計画との整合
スタートアップ企業にとっては、保険適用申請は専門性の高い業務となるため、経験者の採用や外部専門家の活用を検討することが有効です。また、早期から申請戦略を検討し、必要なデータ収集を開発計画に組み込むことが重要です。