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11.2 保険収載の種類と選択

医療機器の保険収載には複数の種類があり、製品特性や既存製品との関係によって最適な収載区分を選択することが重要です。適切な保険収載区分の選択は、製品の市場性と事業の収益性に大きな影響を与えます。

保険収載の主な分類

  1. 特定保険医療材料(特材)としての収載
    • 個別の償還価格が設定される
    • 機能区分ごとに定められた価格で償還
    • 医療機関が実際に使用した分だけ保険請求
  2. C1, C2区分(新機能・新技術)
    • C1:新機能を有する特定保険医療材料
    • C2:新技術を伴う新機能を有する特定保険医療材料
    • 既存の機能区分にない新規性の高い製品
    • 保険医療材料等専門組織での検討を経て収載
  3. 診療報酬上の技術料に包括
    • 医療機器自体の個別償還なし
    • 診療行為に対する技術料に医療機器の費用を含む
    • 医療機関の判断で使用される製品に多い
  4. 先進医療としての評価
    • 保険診療と保険外診療の併用(混合診療)
    • 有効性・安全性の評価データ収集
    • 将来的な保険収載を目指す過渡的な位置づけ
  5. チャレンジ申請(医療機器条件付早期承認制度)関連
    • 革新的な医療機器の早期実用化を目指す
    • 条件付き早期承認後の市販後データ収集と併行
    • 保険収載に向けた特別なルートあり

保険収載区分の選択戦略

保険収載区分の選択においては、以下の観点から総合的に判断することが重要です:

  1. 製品の新規性・革新性
    • 既存製品と比較した技術的優位性
    • 臨床的有用性の程度
    • 新規作用機序や使用方法
  2. 市場動向と競合状況
    • 類似機能を持つ既存製品の収載状況
    • 競合製品の価格帯
    • 市場の成熟度
  3. 臨床的位置づけ
    • 治療アルゴリズムにおける位置づけ
    • 対象患者層の規模
    • 医療経済的インパクト
  4. 企業戦略との整合
    • 収益性の確保
    • 開発投資の回収見通し
    • 長期的な市場展開ビジョン

特にベンチャー企業にとっては、革新的技術を持つ製品であれば、C1・C2区分による新機能区分の取得を目指すことが、適切な償還価格を確保する上で重要な戦略となります。一方、既存の機能区分に類似した製品の場合は、差別化ポイントを明確にしつつ、既存区分での収載を目指すアプローチが現実的です。