10.4 GVP(医薬品・医療機器等の製造販売後安全管理基準)
GVP(Good Vigilance Practice)は、医薬品・医療機器等の製造販売後安全管理の基準を定めた省令です。製造販売業者が市販後の医療機器の安全性を確保するために遵守すべき基準を規定しています。
GVPの法的位置づけ
GVP省令は、薬機法第23条の2の15第3項に基づいて制定された「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令」です。製造販売業者には、この省令に適合した安全管理体制の構築・運用が義務付けられています。
GVPの主要要件
- 組織体制
- 総括製造販売責任者の任命
- 安全管理責任者の設置
- 安全管理統括部門の設置(第一種・第二種製造販売業者)
- 安全管理実施責任者の設置(委託する場合)
- 安全管理業務手順
- 安全管理業務手順書の作成
- 安全確保業務に関する文書の管理
- 業務の記録の保存
- 安全管理情報の収集
- 医療機関・使用者からの情報収集
- 文献・学会情報の収集
- 他の製造販売業者・外国政府からの情報収集
- 安全管理情報の検討及び措置
- 収集情報の検討・評価
- 安全確保措置の立案
- 措置案の実施
- 安全確保措置の実施
- 厚生労働大臣への報告
- 医療機関等への情報提供
- 回収等の安全確保措置
製造販売業許可の種類とGVP要件
医療機器製造販売業の許可の種類によって、GVP要件の厳格さが異なります:
- 第一種製造販売業(高度管理医療機器)
- 安全管理統括部門の設置必須
- 専任の安全管理責任者
- 詳細な手順と記録の維持
- 第二種製造販売業(管理医療機器)
- 安全管理統括部門の設置
- 安全管理責任者(兼任可)
- 簡略化された手順も可能
- 第三種製造販売業(一般医療機器)
- 安全管理統括部門不要
- 安全管理責任者(兼任可)
- より簡略化された手順
スタートアップ企業におけるGVP体制構築
リソースに制約のあるスタートアップ企業では、以下のアプローチが有効です:
- 段階的な体制構築
- 初期段階では最小限の体制から開始
- 事業拡大に応じた体制強化計画の策定
- 効率的なリソース配分
- 業許可の種類に応じた適切な体制構築
- 兼任体制の活用(規制で許容される範囲内)
- 外部リソースの活用
- 安全管理業務の一部委託
- 専門コンサルタントの活用
- 業界団体のテンプレート・ガイドラインの活用
GVP体制の構築・維持は、医療機器ビジネスの継続的な運営において必須の要素であり、製品の市場導入前に適切な体制を整備することが重要です。特にSaMD開発企業では、ソフトウェア特有の不具合・安全性情報の収集・評価方法を手順に組み込むことが求められます。