10.1 市販後調査(PMS)
市販後調査(Post-Market Surveillance:PMS)は、医療機器が市場に出た後の安全性と有効性を継続的に監視・評価するシステムです。医療機器の製造販売業者には、薬機法に基づきPMSの実施が義務付けられています。
市販後調査の目的
市販後調査の主な目的は以下の通りです:
- 市販前には発見できなかった不具合や副作用の検出
- 長期使用における安全性データの収集
- 実臨床での使用状況下での有効性確認
- 新たなリスクの早期発見と対策実施
- 添付文書・取扱説明書の改善点の特定
市販後調査の種類
- 使用成績調査
- 実際の使用環境下での安全性・有効性データ収集
- 特定の医療機関での調査計画に基づく実施
- 承認条件として実施が求められる場合あり
- 製造販売後臨床試験
- 特定の安全性・有効性課題の検証
- 市販後の計画的な臨床試験として実施
- 新たな適応追加などを目的とする場合も
- 不具合情報収集・分析
- 医療機関からの自発報告の収集
- 文献・学会情報からの情報収集
- 海外規制当局・関連企業からの情報入手
特にSaMD(Software as a Medical Device)では、リアルワールドデータの活用によるPMSが重要で、使用ログデータやユーザーフィードバックを効率的に収集・分析する仕組みが求められます。
PMSの実施体制
製造販売業者は以下の市販後安全管理体制を構築する必要があります:
- 安全管理責任者の配置
- 不具合情報収集システムの確立
- 収集情報の評価・分析プロセス
- 安全確保措置の決定・実施体制
- 関係者への情報提供体制
スタートアップ企業においても、製品の市場投入前にこれらの体制整備が必要です。リソースの制約がある場合は、外部専門家の活用や業務の一部委託も検討しながら、効率的なPMS体制の構築を図ることが重要です。