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9.2 ISO 13485の理解

ISO 13485は医療機器の品質マネジメントシステム(QMS)に関する国際規格です。この規格は医療機器の設計、開発、生産、設置およびサービス提供を行う組織に適用される品質マネジメントシステムの要求事項を規定しています。

ISO 13485は医療機器の安全性と有効性を確保するために特化して設計されており、一般的な品質マネジメント規格であるISO 9001をベースとしていますが、医療機器特有の要求事項が追加されています。

9.2.1 ISO 13485の基本要求事項

ISO 13485の主要な要求事項は以下の構成で規定されています:

  1. 品質マネジメントシステム
    • 文書化要件(品質マニュアル、手順書、記録)
    • 品質記録の管理
    • リスクベースドアプローチの適用
  2. 管理者の責任
    • 経営層のコミットメント
    • 顧客重視
    • 品質方針と品質目標
    • 責任・権限・コミュニケーション
    • マネジメントレビュー
  3. 資源の管理
    • 人的資源(力量、教育訓練)
    • インフラストラクチャ
    • 作業環境と汚染管理
  4. 製品実現
    • 製品要求事項の明確化
    • 設計・開発管理
    • 購買管理
    • 製造およびサービス提供
    • 監視機器および測定機器の管理
  5. 測定、分析および改善
    • 顧客満足
    • 内部監査
    • プロセスおよび製品の監視・測定
    • 不適合製品の管理
    • データ分析
    • 是正処置および予防処置

医療機器開発において特に重要なのは設計・開発管理プロセスであり、設計インプット、設計アウトプット、設計レビュー、設計検証、設計バリデーション、設計移管、設計変更といった各段階での管理要件が詳細に規定されています。

9.2.2 QMS省令との違い

QMS省令とISO 13485は基本的な考え方や構成は類似していますが、いくつかの重要な違いがあります:

項目QMS省令ISO 13485
法的位置づけ日本国内の法的要求事項国際的な任意規格
適用範囲製造販売業者、製造業者に適用設計から製造、アフターサービスまでの組織に適用
責任者要件総括製造販売責任者、品質保証責任者、安全管理責任者の設置義務特定の役職名での責任者設置要件なし
外部委託製造業者等との取決め要件アウトソースプロセスの管理要件
不具合報告厚生労働大臣への不具合報告義務規制当局への報告に関する一般的要件
文書体系GQP省令、GVP省令との連携単独での文書体系

日本国内で医療機器を製造販売するためにはQMS省令への適合が法的に必須ですが、グローバル展開を視野に入れる場合はISO 13485認証の取得も重要となります。多くの企業はQMS省令とISO 13485の要求事項を統合した品質マネジメントシステムを構築しています。

特にSaMD(プログラム医療機器)開発では、ソフトウェアライフサイクルプロセス(IEC 62304)との整合性を考慮した品質マネジメントシステムの構築が求められます。