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7.3 一般医療機器の申請

一般医療機器は、医療機器の中でもリスクが最も低いクラスI機器に分類され、基本的に届出のみで製造販売が可能です。ここでは、一般医療機器の申請プロセスについて解説します。

7.3.1 一般医療機器の特徴

一般医療機器は以下の特徴を持ちます:

  • 不具合が生じた場合でも、人体へのリスクが極めて低い
  • 構造が比較的単純で、使用方法も確立している
  • 長期間の使用実績があり安全性が確認されている
項目内容
リスクレベルクラスI(最も低い)
申請方式届出制
申請先各都道府県の薬務課
審査期間実質的な審査はなく、届出受理のみ
必要な資格第三種医療機器製造販売業許可が必要

7.3.2 一般医療機器届出の流れ

一般医療機器の届出プロセスは以下の通りです:

  1. 事前準備
    • 製造販売業許可の取得(第三種以上)
    • 製造所の登録(自社製造の場合)
    • 品質管理体制の構築(QMS体制)
  2. 届出書類の作成
    • 製造販売届出書(様式63)
    • 製造販売届出書の添付資料
      • 形状、構造および原理に関する資料
      • 原材料に関する資料
      • 性能および安全性に関する資料
      • 使用方法に関する資料
      • 製造方法に関する資料
  3. 届出書の提出
    • 都道府県の薬務課へ提出(本社所在地の管轄)
    • 提出後、受理されれば製造販売が可能
  4. 届出番号の取得
    • 受理された届出書に届出番号が付与される
    • この番号は添付文書や包装表示に記載する

7.3.3 一般医療機器届出のポイント

一般医療機器の届出を行う際の重要なポイントを紹介します:

  • 一般的名称の確認:届出予定の医療機器が一般医療機器に該当するか、PMDAのウェブサイト「一般的名称検索」で確認する
  • 既存品との同等性確認:既に市場に流通している同種同効品との同等性を確認し、資料として準備する
  • 添付文書の作成:法令に基づいた添付文書(電子化された添付文書)を作成し、PMDAに登録する
  • 表示物の準備:製品本体、一次包装、二次包装に必要な表示事項を準備する
必要な表示事項内容
医療機器の種類「一般医療機器」の表示
一般的名称PMDAのデータベースに登録されている名称
製造販売業者の名称・住所許可を受けた製造販売業者の情報
製造番号またはロット番号製品の識別情報
滅菌済みの場合「滅菌済」の表示と滅菌方法
単回使用の場合「再使用禁止」の表示

7.3.4 届出後の対応

一般医療機器の届出完了後も、以下の対応が必要です:

  • QMS適合性調査:QMS省令に基づく体制整備と調査対応
  • 製造販売後安全管理(GVP):不具合情報の収集・分析・対応体制の整備
  • 届出事項の変更管理
    • 軽微な変更:記録保管のみで届出不要
    • 届出事項の変更:変更届出書を提出(30日以内)
  • 定期報告:製造販売する一般医療機器の安全性・有効性に関する情報を継続的に収集・評価

7.3.5 スタートアップ企業のための効率的な一般医療機器届出戦略

スタートアップ企業が一般医療機器の届出を行う際の効率的な戦略を提案します:

  • 類似製品の調査:市場に流通している類似製品の添付文書や製品情報を調査し、参考にする
  • コンサルタントの活用:初回の届出時は、経験豊富な薬事コンサルタントに相談することで、円滑な手続きが可能
  • QMS体制の段階的構築:最小限の必要文書から始め、事業拡大に合わせて体制を充実させる
  • PMDAの簡易相談の活用:不明点があれば、PMDAの簡易相談制度を活用する

7.3.6 一般医療機器届出における注意点

一般医療機器の届出には以下の注意点があります:

  • 一般医療機器であっても、品質管理体制(QMS)の整備は必須
  • 使用目的や効能・効果の範囲を超えた標榜は薬機法違反となる
  • 一般医療機器でも、市販後の不具合情報の収集・分析・報告義務がある
  • 海外製造所から輸入する場合、製造所の登録が必要
  • 同一性が認められる範囲の変更は届出不要だが、判断に迷う場合は当局に相談を

7.3.7 一般医療機器から管理医療機器・高度管理医療機器への移行

製品の改良や使用目的の拡大により、一般医療機器から上位クラスへ移行する場合があります:

移行パターン必要な対応
一般→管理医療機器認証基準がある場合は第三者認証機関による認証取得<br>認証基準がない場合はPMDAの承認取得
一般→高度管理医療機器PMDAによる承認審査(臨床データが必要な場合あり)

このような移行を検討する際は、事前にPMDAの対面助言相談を活用し、適切な申請区分と必要なデータについて確認することをお勧めします。

一般医療機器の届出は、比較的容易な手続きですが、適切な品質管理体制と安全管理体制を構築することが、長期的なビジネス成功の鍵となります。