2.6 基本要件基準
2.6.1 基本要件基準の概要と目的
基本要件基準は、医療機器が満たすべき安全性と性能に関する本質的な要求事項を規定したものです。この基準は、医療機器の承認・認証において中心的な役割を果たします。
2.6.1.1 基本要件基準の法的位置づけ
基本要件基準は、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき、厚生労働省令「医療機器及び体外診断用医薬品の製造販売承認申請等の基準に関する省令」により定められています。
法的根拠 | 内容 |
---|---|
薬機法第41条第3項 | 医療機器の製造販売承認等の基準 |
平成17年厚生労働省令第169号 | 医療機器及び体外診断用医薬品の製造販売承認申請等の基準に関する省令 |
この基準への適合は、医療機器の承認・認証取得の前提条件となります。製造販売業者は、医療機器が基本要件基準のすべての適用項目に適合していることを証明する責任があります。
2.6.1.2 承認・認証における基本要件基準の役割
基本要件基準は承認・認証プロセスにおいて以下の役割を果たします:
役割 | 説明 |
---|---|
安全性確保 | 医療機器が患者・使用者に対して安全であることの保証 |
性能確保 | 医療機器が意図した性能を発揮することの保証 |
評価の基準点 | 審査・認証における評価基準としての機能 |
共通言語 | 製造販売業者と規制当局間の共通理解の基盤 |
承認・認証申請において、申請者は「基本要件基準への適合性」を示す資料を提出する必要があります。これは申請資料の重要な部分を構成します。
2.6.1.3 国際整合性(GSPRとの関係)
日本の基本要件基準は、欧州のGSPR(General Safety and Performance Requirements:一般安全性能要求事項)と高いレベルで整合しています。これは国際整合化の一環として進められてきました。
項目 | 説明 |
---|---|
IMDRF | 国際医療機器規制当局フォーラムによる国際整合化の推進 |
GSPR | EU医療機器規則(MDR)における安全性能要求事項 |
相違点 | 要求事項の構成や表現に若干の違いはあるが、本質的な要求内容は同等 |
メリット | 国際整合により、複数市場への同時申請が容易に |
国際整合性を理解することで、グローバル市場を視野に入れた効率的な開発・申請戦略を立てることができます。
2.6.2 医療機器基本要件基準
2.6.2.1 設計・製造に係る要求事項
2.6.2.1.1 一般的要求事項
基本要件基準の「第1章 一般的要求事項」では、医療機器の基本的な安全性と性能に関する要求事項を規定しています。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
使用目的の達成 | 意図された使用目的を達成するための性能を有すること |
リスク低減 | リスクが臨床上の利点に対して許容可能であること |
安全原則の適用 | 設計・製造において、安全の原則に則ること |
意図した性能の維持 | 輸送・保管条件下でも性能が維持されること |
耐用期間 | 指定された耐用期間中、性能と安全性が維持されること |
これらの一般的要求事項は、すべての医療機器に適用されます。各要求事項への適合を示すには、設計検証・妥当性確認の結果、リスク分析文書などが必要です。
2.6.2.1.2 化学的・物理的・生物学的特性
医療機器の材料特性に関する要求事項を規定しています。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
原材料の適合性 | 使用される材料が機器の性能・安全性に適合していること |
毒性・引火性 | 毒性や引火性に対する安全対策が講じられていること |
環境影響 | 環境条件(温度、湿度、圧力等)の影響に対する対策 |
相互作用 | 他の物質・材料との相互作用による悪影響の防止 |
溶出物・残留物 | 溶出物や残留物によるリスクへの対応 |
特に患者に接触する医療機器では、ISO 10993シリーズなどに基づく生物学的安全性評価が重要となります。
2.6.2.1.3 微生物汚染等の防止
感染リスクの制御に関する要求事項を規定しています。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
設計・製造上の配慮 | 患者、使用者、第三者への感染リスクを最小化する設計 |
微生物侵入防止 | 微生物の侵入を防止する設計・製造 |
滅菌医療機器 | 適切な滅菌手順と無菌性保証 |
滅菌状態の維持 | 包装により滅菌状態を維持すること |
微生物レベルの制御 | 特定の微生物レベルが要求される場合の管理 |
滅菌医療機器では、ISO 11135(エチレンオキサイド滅菌)、ISO 11137(放射線滅菌)、ISO 17665(湿熱滅菌)などの関連規格への適合が求められます。
2.6.2.1.4 構造・特性・性能に関する要求事項
医療機器の物理的特性や機能に関する要求事項を規定しています。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
機械的安全性 | 機械的リスク(可動部、振動等)への対策 |
工学的特性 | 容量・圧力・速度等の工学的特性に関する安全設計 |
環境条件への対応 | 環境条件の変化に対する安全性の確保 |
複合・接続 | 他の機器との接続・組み合わせに関する安全性 |
不具合の表示 | 不具合が生じた場合の使用者への通知機能 |
これらの要求事項は、設計検証・妥当性確認試験により適合性を証明します。
2.6.2.1.5 測定機能に関する要求事項
測定機能を有する医療機器に対する要求事項です。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
測定精度 | 適切な精度を有すること |
表示単位 | 法定計量単位(SI単位)での表示 |
精度の維持 | 意図された使用条件下での精度維持 |
校正 | 校正の方法と頻度に関する情報提供 |
測定機能を持つ医療機器(例:血圧計、体温計)では、測定精度の検証データが重要となります。
2.6.2.1.6 放射線に対する防護
放射線を利用する、または放射線に対する防護が必要な医療機器に関する要求事項です。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
放射線量の最小化 | 目的を達成する最小限の放射線量での設計 |
放射線の制御 | 放射線の量・方向・分布等の制御 |
使用者への情報提供 | 放射線に関するリスクの情報提供 |
不要な放射線の回避 | 意図しない放射線被曝の防止 |
放射線を利用する医療機器(X線装置など)では、IEC 60601-1-3などの放射線防護に関する規格への適合が求められます。
2.6.2.1.7 電気的安全性・機械的安全性
電気的・機械的リスクに関する要求事項です。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
電気的安全性 | 感電防止、エネルギー制御、電磁両立性等 |
機械的安全性 | 可動部による危険防止、機械的強度の確保 |
使用環境への配慮 | 使用環境下での安全機能の維持 |
保護装置 | 安全機能、警報システム等の適切な設計 |
電気を使用する医療機器では、IEC 60601シリーズへの適合が重要です。特にIEC 60601-1(基本安全)とIEC 60601-1-2(EMC)は必須の規格となります。
2.6.2.1.8 エネルギー又は物質を供給する医療機器の要求事項
患者に対してエネルギーまたは物質を供給する医療機器(輸液ポンプ、人工呼吸器など)に関する要求事項です。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
設定値の信頼性 | 設定値の正確性と信頼性の確保 |
危険な出力の防止 | 危険なレベルのエネルギー・物質の供給防止 |
設定表示 | 設定値と実際の出力の表示 |
警報システム | 機器の機能不全時の警報システム |
これらの機器では、機能安全や警報システムに関する検証が特に重要です。
2.6.2.1.9 自己検査医療機器等の要求事項
自己検査用の医療機器や一般使用者が使用する医療機器に関する要求事項です。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
使用者特性への配慮 | 一般使用者の知識・経験を考慮した設計 |
誤使用リスクの低減 | 誤使用のリスクを最小化する設計 |
理解しやすい表示 | 使用者が理解しやすい表示と使用説明 |
結果の信頼性 | 誤った結果のリスク低減 |
家庭用医療機器では、ユーザビリティ評価(IEC 62366)が特に重要となります。
2.6.2.1.10 製造業者・製造販売業者が提供する情報
ラベル、添付文書などの情報提供に関する要求事項です。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
使用者への情報提供 | 安全かつ適正な使用のための十分な情報提供 |
ラベル表示 | 識別情報、使用期限、注意事項等の適切な表示 |
添付文書 | 使用方法、警告、禁忌等の明確な記載 |
シンボル・色 | 国際規格に基づくシンボル・色の使用 |
情報提供資材は、ISO 15223(シンボル)、JIS T 0601-1(医用電気機器のラベル表示)などの規格に準拠する必要があります。
2.6.2.2 基本要件適合性チェックリストの作成方法
基本要件適合性チェックリストは、医療機器が基本要件基準のすべての適用項目に適合していることを示す重要な文書です。
作成のステップ | 内容 |
---|---|
1. 適用判断 | 各要求事項の適用・非適用を判断 |
2. 適合性評価 | 適用項目について適合性を評価 |
3. 根拠資料の特定 | 適合性を裏付ける資料(試験報告書、規格証明書等)を特定 |
4. チェックリスト作成 | 項目ごとに適合性と根拠資料を記載 |
チェックリストの一般的な構成:
- 基本要件項目番号
- 要求事項の内容
- 適用・非適用の判断
- 適合・不適合の判断
- 適合性を示す資料(エビデンス)
- 備考(特記事項)
このチェックリストは申請資料の一部となり、審査において重要な役割を果たします。
2.6.2.3 基本要件への適合を示す証拠資料の準備
基本要件への適合を証明するためには、適切な証拠資料(エビデンス)が必要です。
証拠資料の種類 | 内容 |
---|---|
試験報告書 | 安全性・性能試験の結果 |
規格適合証明書 | 国際規格への適合を示す証明書 |
リスク分析文書 | ISO 14971に基づくリスク分析結果 |
設計検証記録 | 設計検証の結果・記録 |
設計妥当性確認記録 | 設計妥当性確認の結果・記録 |
生物学的安全性評価報告書 | ISO 10993シリーズに基づく評価報告書 |
技術文書 | 設計仕様書、操作マニュアル等 |
これらの証拠資料は、QMS文書体系の一部として管理され、基本要件適合性チェックリストから参照されます。
2.6.2.4 クラス分類別の基本要件対応の違い
医療機器のクラス分類によって、基本要件への対応レベルや必要な証拠資料は異なります。
クラス | 対応レベルの特徴 |
---|---|
クラスⅠ | • 比較的シンプルな対応 • 基本的な安全性要件の確認 • 自己宣言による適合性証明が中心 |
クラスⅡ | • より詳細な証拠資料が必要 • 認証基準がある場合はそれに基づく評価 • 第三者認証機関による確認 |
クラスⅢ | • 包括的な証拠資料が必要 • 詳細なリスク分析・評価 • PMDAによる審査 |
クラスⅣ | • 最も厳格な証拠要件 • 詳細な安全性・有効性データ • 臨床データを含む包括的な評価 • PMDAによる厳格な審査 |
高リスクの医療機器(クラスⅢ・Ⅳ)ほど、基本要件への適合証明のための証拠資料は詳細かつ包括的なものが求められます。
2.6.3 体外診断用医療機器基本要件基準
2.6.3.1 体外診断用医療機器特有の要求事項
体外診断用医療機器(IVD機器)には、一般の医療機器とは異なる特有の要求事項があります。
2.6.3.1.1 性能特性(分析性能・臨床性能)
体外診断用医療機器の性能評価に関する要求事項です。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
分析性能 | • 分析感度・特異度 • 真度(正確さ) • 精度(再現性) • 検出限界 • 測定範囲 • 直線性 |
臨床性能 | • 臨床感度・特異度 • 陽性・陰性的中率 • カットオフ値の妥当性 • 臨床的有用性 |
安定性 | • 較正安定性 • 試薬安定性 • オンボード安定性 |
これらの性能特性は、適切な評価試験により証明する必要があります。
2.6.3.1.2 化学的・物理的要求事項
IVD機器の化学的・物理的特性に関する要求事項です。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
試薬の品質 | 試薬の純度と安定性の確保 |
材料の相互作用 | 検体や試薬との相互作用による影響の最小化 |
物理的特性 | 物理的特性(pH、粘性等)の管理 |
干渉物質 | 一般的な干渉物質による影響の評価と対策 |
これらの要求事項は、試験データや安定性試験結果により適合性を証明します。
2.6.3.1.3 感染と微生物汚染に関する要求事項
IVD機器における感染リスク制御に関する要求事項です。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
感染リスク低減 | 使用者への感染リスクを最小化する設計 |
微生物制御 | 微生物汚染による結果への影響防止 |
保存条件 | 微生物増殖を防ぐ保存条件の設定 |
廃棄対策 | 感染性廃棄物の安全な処理への配慮 |
特に検体を扱うIVD機器では、感染防止対策が重要となります。
2.6.3.1.4 製造と環境に関する要求事項
IVD機器の製造環境と環境条件に関する要求事項です。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
製造環境管理 | 製品品質に影響を与える環境条件の管理 |
環境条件への対応 | 使用環境条件(温度、湿度等)下での性能維持 |
輸送・保管条件 | 輸送・保管中の安定性確保 |
環境影響 | 環境変化が測定結果に与える影響の評価 |
これらの要求事項は、環境試験データや安定性試験結果により適合性を証明します。
2.6.3.1.5 測定機能を有する機器に関する要求事項
測定機能を持つIVD機器に対する要求事項です。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
測定範囲・精度 | 意図する測定範囲と十分な精度の確保 |
校正手順 | 校正手順と校正物質の明確化 |
測定単位 | SI単位系または他の認められた単位の使用 |
計量トレーサビリティ | 測定値の計量トレーサビリティの確保 |
測定値のトレーサビリティは、特に定量的IVD機器において重要です。
2.6.3.1.6 放射線防護に関する要求事項
放射性物質を使用するIVD機器に関する要求事項です。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
放射線量の最小化 | 最小限の放射線量での機能実現 |
漏洩防止 | 放射性物質の漏洩防止対策 |
表示・警告 | 放射性物質使用の明確な表示と警告 |
廃棄手順 | 放射性廃棄物の適切な廃棄手順の提供 |
放射性同位元素を使用するIVD機器では、放射線障害防止法など関連法規制への対応も必要です。
2.6.3.1.7 自動化された機器の要求事項
自動分析装置などの自動化されたIVD機器に関する要求事項です。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
ソフトウェア検証 | 制御ソフトウェアの検証・妥当性確認 |
エラー検出 | 機器のエラー状態の検出と警告機能 |
データ保護 | 測定データの保護と完全性確保 |
ユーザーインターフェース | 操作ミスを防止するインターフェース設計 |
自動化IVD機器では、IEC 61010-2-101(体外診断用医療機器の安全要求事項)への適合が重要です。
2.6.3.1.8 表示・ラベル・添付文書に関する要求事項
IVD機器の情報提供に関する要求事項です。
主な要求事項 | 内容 |
---|---|
使用目的 | 明確な使用目的・対象の記載 |
性能特性 | 性能特性(感度、特異度等)の記載 |
制限事項 | 測定の制限事項、干渉物質の情報 |
校正情報 | 校正方法、トレーサビリティ情報 |
結果解釈 | 結果の解釈方法、参考範囲の情報 |
IVD機器では、臨床的意義や結果解釈に関する情報が特に重要です。
2.6.3.2 体外診断用医療機器の基本要件適合性証明の特徴
IVD機器の基本要件適合性証明には、一般医療機器とは異なる特徴があります。
特徴 | 説明 |
---|---|
性能評価の重視 | 分析性能・臨床性能の評価データが中心 |
参照標準との比較 | 既存の参照法や標準品との比較データ |
臨床有用性の証明 | 臨床的意義・有用性を示す証拠 |
干渉評価 | 干渉物質の影響評価データ |
IVD機器の基本要件適合性証明では、性能評価データと臨床的有用性の証明が特に重要となります。
2.6.3.3 品質管理パラメータと基本要件の関係
IVD機器の品質管理パラメータと基本要件の関係です。
品質管理パラメータ | 基本要件との関係 |
---|---|
ロット間差 | 製品の一貫性に関する要求事項との関連 |
安定性 | 耐用期間中の性能維持に関する要求事項との関連 |
精度管理 | 測定性能に関する要求事項との関連 |
校正検証 | 測定精度に関する要求事項との関連 |
これらの品質管理パラメータは、基本要件適合性を継続的に保証するために重要です。
2.6.3.4 校正物質・標準物質と基本要件
校正物質・標準物質は、IVD機器の性能確保において重要な役割を果たします。
要素 | 基本要件との関係 |
---|---|
校正物質の設定 | 測定精度・トレーサビリティ要求事項との関連 |
標準物質の選択 | 測定の信頼性・比較可能性要求事項との関連 |
トレーサビリティ | SI単位や国際標準への連鎖に関する要求事項 |
不確かさの評価 | 測定精度に関する要求事項との関連 |
適切な校正物質・標準物質の使用と、そのトレーサビリティの確保は、IVD機器の基本要件適合性において重要な要素です。
2.6.4 基本要件への適合性証明における一般的な留意点
2.6.4.1 規格・基準の活用方法
基本要件への適合性証明には、関連する規格・基準を効果的に活用することが重要です。
活用方法 | 説明 |
---|---|
整合規格の特定 | 基本要件との関連性が認められている規格の特定 |
規格適合性評価 | 特定した規格への適合性評価の実施 |
適合宣言の作成 | 規格適合性を基にした基本要件適合宣言の作成 |
規格間のギャップ対応 | 規格でカバーされない要件への個別対応 |
整合規格への適合は、対応する基本要件への適合の推定を受けることができ、適合性証明を効率化します。
2.6.4.2 社内規格の設定と基本要件の関係
社内規格と基本要件の関係を適切に管理することが重要です。
要素 | 説明 |
---|---|
社内規格の設定 | 基本要件を満たすための詳細仕様の設定 |
受入基準の設定 | 基本要件を満たす製品品質を保証する基準設定 |
トレーサビリティ確保 | 社内規格と基本要件の関連性の明確化 |
変更管理 | 社内規格変更時の基本要件適合性への影響評価 |
社内規格は、基本要件を具体化し、日常的な品質管理の基準として機能します。
2.6.4.3 リスク管理と基本要件適合性の関係
リスク管理プロセスは、基本要件適合性証明と密接に関連しています。
関連性 | 説明 |
---|---|
リスク特定 | 基本要件に関連するリスクの特定 |
リスク評価 | 基本要件適合性に影響するリスクの評価 |
リスクコントロール措置 | 基本要件を満たすためのリスク低減措置 |
残留リスク評価 | 基本要件における受容可能なリスクとベネフィットの評価 |
ISO 14971に基づくリスク管理プロセスは、基本要件適合性証明の重要な部分を構成します。
2.6.4.4 適合宣言書の作成方法
基本要件適合宣言書は、医療機器が基本要件に適合していることを宣言する文書です。
要素 | 内容 |
---|---|
製品識別情報 | 対象製品の明確な識別 |
適用法規制 | 適用される法規制の明示 |
基本要件参照 | 適合を宣言する基本要件の参照 |
適合性の基礎 | 適合性判断の根拠(使用規格、試験等) |
責任者署名 | 権限ある者の署名・日付 |
適合宣言書は、技術文書の一部として保管・管理されます。
2.6.4.5 審査・照会対応でよくある指摘事項と対応方法
基本要件適合性に関する審査・照会では、以下のような指摘がよくあります。
よくある指摘事項 | 対応方法 |
---|---|
適合性証拠の不足 | • 追加試験データの提出 • より詳細な評価報告書の提出 |
非適用判断の妥当性 | • 非適用理由の詳細説明 • 製品特性に基づく論理的説明 |
リスク評価の不足 | • リスク分析の補完 • リスクコントロール措置の詳細説明 |
使用規格の適切性 | • 規格選択理由の説明 • 追加規格への適合証明 |
性能データの不足 | • 追加性能データの提出 • 臨床評価データの補完 |
これらの指摘に対応するためには、事前に包括的な技術文書を準備し、適合性証明の論理性を確保することが重要です。
基本要件基準は、医療機器の安全性と有効性を確保するための基本的な要求事項を定めたものです。適切な基本要件適合性証明は、承認・認証プロセスを円滑に進めるための鍵となります。スタートアップ企業は、製品開発の初期段階から基本要件を考慮し、体系的な証拠資料の準備を計画することが重要です。