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データインテグリティとヒューマンエラー

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データインテグリティとヒューマンエラー

データインテグリティの保証のためには、ヒューマンエラーの防止が欠かせない。
例えば、故意に改ざんしたデータとヒューマンエラーで変更してしまったデータではどちらが患者の安全性にとって重要であろうか。
答えは同じである。
データインテグリティの保証を脅かす事象のうち80%までがヒューマンエラーであると言われている。
システムにセキュリティや監査証跡を付けても、ヒューマンエラーは防げない。
つまり、ヒューマンエラーそのものの防止が喫緊の課題なのである。
データインテグリティの保証や品質リスクマネジメントにおいては、構造設備や分析機器等の故障などの対策も重要であるが、プロセスにおいてヒューマンエラーを検出することも重要である。

例えば、転記作業に対して転記ミスがあり、計算作業に対して計算ミスがあり、入力作業に対して入力ミスなどが発生しうる。
それらのミスに対して、チェックする作業を各手順書に盛り込まなければならない。
様式を工夫してチェック欄を設けることも可能であるが、重要なデータに関しては別人がチェックをすることが望ましいであろう。

指差呼称

しかしながら、すべてのプロセスにおいて別人のチェックを実施することは困難である。
例えば、電車の車掌は扉の開閉をチェックするが、1車両に2名の車掌を乗務させることは現実的ではない。

そこで「指差呼称」を実施している。「指差呼称」は、業界や事業場により「指差(確認)喚呼」、「指差称呼(唱呼)」とも呼ばれている。 一人でチェックするのではあるが、「目で確認」「指を指し」「声を出す」の3重チェックを行っているのである。

指差呼称が普及したきっかけは、日本国有鉄道の蒸気機関車の機関士が実施していたことにあるといわれている。
当時、運転していた機関士は目が悪いことが理由で、機関助手に何度も信号の確認を、指差呼称同様の動作にて行わせていた。
それを見た機関車課の上司が賞賛し、ルール化したといわれている。
現在では鉄道業のほか、航空業や運輸業、建設業、製造業等、安全確認が重要な幅広い業界で行われている。
例えばあるスイッチを操作する場面があったとする。
‘対象を指さして確認する動作’をするかしないかこれによってどれほど誤りを抑制できるかを調査したデータがある。

(1)何もしないでキーを押す。
(2)指差ししてからキーを押す。
(3)呼称してからキーを押す。
(4)指差し・呼称してからキーを押す。 延べ200 回ずつ10 人について行わせた。

その作業成績をキーの押し誤りの発生率について見た結果は以下のとおりである。

・何もせずに操作した場合    ⇒2.38%
・呼称だけして操作した場合  ⇒1.00%
・指さしだけして操作した場合 ⇒0.75%
・指をさして呼称し操作した場合⇒0.38%

この様な結果になり、指をさして呼称し操作した場合と、何もせず操作した場合とを比べると誤り率が6分の1になる、という結果が出ている。

※出典:指さし呼称の効果 検定実験記録(平成8年鉄道総合技術研究所・押し誤り率)

これは対象を指差し、名前を呼称し、その声を自分の耳で聞く事により、脳が活性化され注意力が高まる事により得られる効果であり、何せず操作した場合に比べ脳を3倍以上使うと言われている。

しかしながら、指差呼称を実施したとしても、0.38%のエラーが発生している。 つまり人は1,000回の作業のうち、4回程度は必ずミスを犯すのである。

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