Self Inspectionとデータインテグリティに関する規制当局の期待

英国医薬品庁(MHRA)は、ホームページで「MHRA expectation regarding self inspection and data integrity」という記事を掲載している。

この記事の中で、MHRAは、製薬企業は自己点検の重要性を見直し、データインテグリティやトレーサビリティが有効なものとなることを期待している。

データインテグリティの問題としては、故意による不正や改ざんによるものよりは、不注意、教育不足、チェック不足等による、要員の問題が大きい。

各国の規制当局は、サプライチェーンがグローバル化していることに伴い、海外査察の回数を増やしている。
しかしながら、査察にかけることができるリソースは限られているため、効率的な査察手法が必要である。
従来の査察では、査察官から指摘された事項を是正しておけば、容認されてきた。
しかしである、わずか数日の査察で査察官が発見することができる問題点・リスクは数が限られている。
したがって、査察官が発見したエラー(リスク)に対して是正を行えば自国民の安全が守られるということにはならない。

そこでFDAなどの査察では、エラー(リスク)を発見する査察手法から、当該企業が経営者のガバナンス(統治)のもと『品質システム(品質システム)』を確立しているかどうかを調査するといった手法に切り替えている。
どんな企業が査察官に安心感を与えるかというと、製薬企業や医療機器企業において、優秀な監査員が存在し、内部監査(Self Inspection)が適切に実施されていることである。

Self Inspectionは、日本の省令等では「自己点検」と訳されているが、この用語は適切ではない。
Self Inspectionでは、企業自らの内部監査等によって、日々リスクを発見し、是正・予防することが重要である。
つまり当局査察で指摘されるのを待って改善するのではなく、企業自らが積極的に改善活動を実施するのである。
Self Inspectionでは、潜在している問題点(つまりリスク)を自ら発見することが必要である。
是正処置・予防処置やSelf Inspection(内部監査)の結果は、マネージメントプロセスにフィードバックし、マネジメント(経営者)が、マネジメントレビュなどによって改善指示を出したり、次年度の品質目標をたてることになる。

データインテグリティを保証するためには、企業のトップ以下が全員参加で、PDCAのサイクル(Plan・Do・Check・Action)を回し続け、企業全体がスパイラルアッフするシステムを構築する必要がある。
そのためには、Self Inspection(内部監査)と是正処置が企業の体質の強化にとってきわめて重要である。
企業体質を向上させるチャンスを自ら放棄するような原因究明の省略は厳に慎まなければならない。
つまり、同じ不適合が何度も繰り返して起きることがないような再発防止のシステム作りが大切である。
一概に単純な不適合だから単なる修正処置をするだけで良いとか、原因究明や再発防止をする必要がないと考えるのは企業のスパイラルアップのために得策ではない。
単純な不適合こそ、原因究明や再発防止を怠ると、モグラ叩きのようにまた同じ不適合が繰り返されてしまい、PDCAのサイクルが回らなくなってしまう。

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【目次】
データインテグリティ規程

1. 目的
2. 適用範囲
3. 用語の定義
4. 背景
5. データインテグリティの原則
6. データガバナンス
6.1 データインテグリティのためのステップ
6.1.1 教育およびコミュニケーション
6.1.2 リスクの発見および低減
6.1.3 技術およびITシステム
6.1.4 データガバナンス
7. 手順書等
8. 参考
9. 付則


データインテグリティ手順書

1. 目的 
2. 適用範囲 
3. 用語の定義 
4. 役割と責任 
5. 啓発活動 
6. 教育訓練 
7. 関連する手順書の改訂 
 7.1 リスクマネジメント 
   7.1.1 リスクの検討 
   7.1.2 リスク低減策の検討 
   7.1.3 リスク低減策の実施 
 7.2 データライフサイクル 
   7.2.1 データの作成 
   7.2.2 データの処理 
   7.2.3 データのレビュ・報告・使用 
   7.2.4 データの保管・維持 
8. コンピュータシステムの見直し、導入 
9. 監視・測定 
10. 監視・測定 
11. 記録の保管 
12. 参考 
13. 付則 

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