結論
推奨できません。 QMS省令上「品質保証部」という名称の部署を置くことは要求されておらず、統括部門をどこに置くかは各社が定めてよい事項です(逐条解説は、名称は各企業が定めてよいが統括を行う部門がどこであるかは明確でなければならないとしています)。しかし、生産部の下位組織である品質管理課をもって「国内の品質管理業務を統括する部門(品質保証部門)」とし、その課長を国内品質業務運営責任者に任命する体制は、独立性の観点から指摘リスクが高いと考えます。
根拠となる条文
QMS省令第72条第1項(国内品質業務運営責任者)
製造販売業者は、国内の品質管理業務の責任者として、国内に所在する施設に、次の要件を満たす者を置かなければならない。
- 製造販売業者における品質保証部門の責任者であること
- 品質管理業務その他これに類する業務に3年以上従事した者であること
- 国内の品質管理業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有する者であること
- 医療機器等の販売に係る部門に属する者でないこと、その他国内の品質管理業務の適正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがない者であること
なお「国内に所在する施設」は、逐条解説上、製造販売業者の主たる機能を有する事務所の所在地等を指すとされており、体制説明資料の作成時に押さえておくべき点です。
同条第2項第1号は、国内品質業務運営責任者の業務として「国内の品質管理業務を統括すること」を定めています。したがって、国内の品質管理業務を統括する部門=品質保証部門、その責任者=国内品質業務運営責任者、という一体の建て付けになります。
**第15条第2項(責任及び権限)**は、品質に影響を及ぼす業務に従事する者について「相互の関係を定め、当該職務を行うために必要な独立性を確保するとともに、必要な責任及び権限が与えられている」ようにすることを求めています。逐条解説は「必要な独立性」の例として、採算性といった営業的見地からの影響を受けないことを挙げています。
品質管理課とした場合の問題点
① 独立性の実質が確保できない(第15条第2項および第72条第1項第4号)
第72条第1項第4号が明示的に排除しているのは「販売に係る部門に属する者」ですので、生産部門が条文上直接排除されているわけではありません。もっとも、同号後段は「その他……支障を及ぼすおそれがない者」という包括要件を置いており、第15条第2項の独立性確保の趣旨(採算性等の見地からの影響を受けないこと)と併せて読めば、生産部長の指揮命令下にある課長が国内の品質管理業務を統括する体制は、運用上この包括要件・独立性要件を満たさないと評価される可能性が高いというのが当方の解釈です。稼働率・納期・コストと品質判断が対立する場面で、独立した判断ができない構造にあります。
② 自己検証構造になる
市場への出荷可否の決定、不適合製品の処理、出荷停止・回収の発議といった業務を、製造工程を所管する部門の内部で完結させることになり、客観性・公平性が担保されません。他制度における独立性要求の書き分けを参照すると、この体制の位置づけが明確になります。
| 省令 | 独立性の要求内容 |
|---|---|
| GMP省令第4条 | 品質部門は製造部門から独立していなければならない |
| GQP省令第4条第3項第3号 | 品質保証部門は、医薬品等又は医療機器の販売に係る部門その他品質管理業務の適正かつ円滑な遂行に影響を及ぼす部門から独立していること |
医療機器QMSにおいても、製造工程を所管する部門が国内の品質管理業務を統括することは、これらの独立性思想と整合しません。
③ 製造業者としての品質管理業務と、製造販売業者としての国内の品質管理業務の混同
同一法人であっても、両者は別個の業務です。
| 区分 | 主な業務 |
|---|---|
| 製造業者側(品質管理課) | 工程内検査、製品試験検査、監視測定機器の管理 |
| 製造販売業者側(品質保証部門) | 市場出荷可否決定、品質情報・不具合情報の処理、回収、変更管理の把握、教育訓練・内部監査の統括、管理監督者・総括への報告 |
逐条解説で確実に裏付けられるのは「国内の品質管理業務を統括する部門がどこであるかを明確にすること」までですが、品質管理課を統括部門にすると、組織図・業務手順書上でこの区分と統括関係を説明することが実務上困難になります。
④ 権限の実効性(第71条第1項)
第71条第1項では、医療機器等総括製造販売責任者について、**国内品質業務運営責任者を監督すること(第3号)**と、**管理責任者及び国内品質業務運営責任者の意見を尊重すること(第4号)**が並列に規定されています。つまり、総括が国内品質業務運営責任者を監督し、管理責任者と国内品質業務運営責任者の双方の意見を尊重する建て付けであり、管理責任者と国内品質業務運営責任者の間に上下関係はありません。いずれにせよ、課長級かつ生産部長の部下という位置づけでは、総括に対して独立した意見を述べ、生産部門に対して権限を行使する実効性を欠くと評価されます。
対応案
案A(推奨) 品質保証部を国内の品質管理業務を統括する部門とし、品質保証部長を国内品質業務運営責任者に任命する。品質管理課は製造業者としての試験検査を担う実施部門と位置づけ、業務分担を手順書で明確化する。
案B 品質管理課を生産部から切り離し、品質保証部の下位組織(または管理監督者直属)に組織変更する。試験検査の実施機能は生産部に残す設計も可。
案C(現任者を充てる場合) 当該者を生産部の指揮命令系統から外し、管理監督者直属の品質保証部門責任者として発令する。加えて、市場出荷可否の最終判断権・出荷停止権・回収発議権を生産部長から独立して行使できることを組織図・職務権限規程・品質管理監督文書に明記する。「生産部内の一課」という体裁のままでは調査時の説明が困難ですので、少なくとも所属の付け替えが必要です。なお、第72条関係の逐条解説では総括製造販売責任者が国内品質業務運営責任者を兼務できる場合があるとされていますので、人員が限られる場合は兼務も選択肢として比較検討する価値があります。
いずれの案でも、第2号の3年以上の従事経験(自社・他社を問わず合計年数でよく、ISO 9001/ISO 13485関連業務も対象になり得ます)の充足確認と、法第23条の2の15の2(製造販売業者の法令遵守体制)における人員確保・体制整備の観点からの説明資料の整備をあわせてご検討ください。
条文の正確な文言は、令和3年(2021年)3月26日付改正後のQMS省令原文(平成16年厚生労働省令第169号)および逐条解説をご確認ください。