1 Answers
Best Answer
0
はじめに
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)の名称に含まれる「品質」「有効性」「安全性」は、医薬品・医療機器等の規制における三大要素である。しかし、薬機法の条文中にこれらの用語の明確な「定義規定」は置かれていない。第2条には「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」「再生医療等製品」等の定義が詳細に規定されているが、「品質」「有効性」「安全性」そのものの定義条項は存在しない。 これは法律の構造上、これらが個別に定義されるというよりも、法全体を貫く基本理念として機能しているためである。第1条(目的規定)のみならず、第1条の2(国の責務)、第1条の4(医薬品等関連事業者等の責務)、第1条の5(医薬関係者の責務)においても繰り返し「品質、有効性及び安全性の確保」が言及されている。 以下に、規制実務・薬事行政における各用語の一般的な意味合いを整理する。品質(Quality)
製品が定められた規格・基準に適合し、ロットごとに均一で安定した特性を持っていることを指す。具体的には、原材料の管理、製造工程の管理、最終製品の規格試験(純度、含量、無菌性など)を通じて担保される。 薬機法第14条第2項第4号では、製造管理・品質管理の方法が「厚生労働省令で定める基準」に適合していることを承認の条件として規定しており、GMP(医薬品の場合)やQMS省令(医療機器の場合)といった製造管理・品質管理基準がこの概念を支えている。有効性(Efficacy)
医薬品・医療機器等が、その意図された使用目的(効能・効果、使用目的)に対して、科学的根拠に基づく治療上・診断上の効果を有することを指す。 薬機法第14条第2項第3号イでは「申請に係る医薬品又は医薬部外品が、その申請に係る効能又は効果を有すると認められないとき」は承認を与えないと規定している。また、第14条第3項では「臨床試験の試験成績に関する資料その他の資料」の添付が求められており、非臨床試験や臨床試験(治験)のデータによって評価される。安全性(Safety)
医薬品・医療機器等を使用した際に、人体に対する危害(副作用、有害事象、不具合など)が許容可能な範囲にあることを指す。 薬機法第14条第2項第3号ロでは「効能又は効果に比して著しく有害な作用を有することにより、医薬品又は医薬部外品として使用価値がないと認められるとき」は承認を与えないとしている。すなわち、絶対的に安全であることではなく、有効性とのバランス(ベネフィット・リスクバランス)の中で評価される相対的な概念である。三要素の関係性
承認審査では「有効性」と「安全性」のバランス(リスク・ベネフィット評価)が中心となり、「品質」はその前提条件として位置づけられる。品質が確保されていなければ、有効性・安全性の評価自体が成り立たない。 この構造は第14条の承認審査において、第2項第4号で品質管理基準への適合を別途確認しつつ、第3号で有効性・安全性を評価するという形で具体化されている。第1条(目的規定)の全体像
薬機法第1条では、「品質、有効性及び安全性の確保」に加えて、以下の目的も規定されている。- 保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止(市販後の安全対策、回収命令等の根拠)
- 指定薬物の規制(危険ドラッグ等への対応として平成25年改正で強化)
- 医薬品等の研究開発の促進のために必要な措置(先駆的医薬品等の指定制度、条件付き承認等の根拠)