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ご質問いただいた「人のうっかりミスに対する有効な是正処置」について、これは決して稚拙な質問ではなく、多くの組織が直面する本質的な課題です。特に重要なのは、FDAが約15年前から指摘しているように、教育訓練は真の是正処置ではないという点です。
なぜ従来のアプローチは失敗するのか
作業標準書の改定や教育訓練だけでは再発防止にならない理由
- 人が入れ替われば、新しい人は同じミスを繰り返す
- 時間の経過とともに注意力は低下する
- 確認作業の増加は、かえって新たなミスを誘発する
- 個人の規律に依存する対策は、組織として脆弱
効果的な是正処置の原則
CAPA(是正処置・予防処置)は、必ずQMS(品質マネジメントシステム)という「仕組み」に落とし込む必要があります。
システムレベルでの対策
1. エラープルーフ化(ポカヨケ)の導入
物理的・システム的にミスが起きない仕組みを構築します。
- 誤った部品が物理的に取り付けられない形状設計
- システムによる自動エラー検出と警告
- 作業順序を間違えると次工程に進めないインターロック
これらは人の注意力に頼らず、QMSの設計要件として組み込みます。
2. プロセスの根本的再設計
単なる手順の追加ではなく、プロセス全体を見直します。
- 複雑な手順の簡素化
- 自動化による人的介入の最小化
- リスクの高い作業の排除または代替
3. QMSへの統合
- リスクマネジメントプロセスへの組み込み
- 変更管理システムの強化
- 継続的モニタリングの仕組み化
- バリデーション要件の見直し
4. 作業環境のシステム的改善
環境要因もQMSの一部として管理
- 疲労管理システムの導入
- 作業環境基準の設定と監視
- エルゴノミクスを考慮した設備設計
5. エラーからの組織学習システム
個人を責めるのではなく、システムの改善機会として活用
- インシデント報告システムの構築
- 根本原因分析の標準化
- 改善効果の測定と検証プロセス
6. 段階的実装と有効性評価
- パイロットテストによる検証
- 定量的な効果測定指標の設定
- PDCAサイクルによる継続的改善
重要な考え方
「人は必ずミスをする」という前提に立ち、以下を実現するシステムを設計します。
- ミスが起きにくい仕組み(予防)
- ミスが起きても検出できる仕組み(検知)
- ミスが起きても重大な影響に至らない仕組み(影響緩和)
まとめ
効果的な是正処置とは、個人の注意力や規律に依存せず、組織のQMSという仕組みそのものを改善することです。教育訓練は補助的な手段に過ぎず、真の解決策はシステムレベルでの対応にあります。
このアプローチにより、人が変わっても、時間が経過しても、安定して高い品質を維持できる組織体制を構築することができます。