いただいたご回答への追加の質問をさせていただきたいのですが、こちらに記載させていただいたら追加のご回答をいただけるのかもわからいままひとまず記載させていただきます。
詳細なご回答をいただきありがとうございました。
ご回答につきまして承知いたしました。
そうなりますと、結論といたしましては、
・医療機器の実務経験がないのであれば、三役とも兼務不可
・医療機器の実務経験がある人材が就くのであれば、医薬品・医療機器間でそれぞれの三役(医薬品の総括製造販売責任者と医療機器等総括製造販売責任者、品質保証責任者と国内品質業務運営責任者、医薬品の安全管理責任者と医療機器の安全管理責任者)の兼務は可能
ということになりますでしょうか。
よろしくお願いいたします。
医薬品の責任者が医療機器の三役を兼任することは、法律上絶対に禁止されているわけではありませんが、注意が必要です。
また、特に品責については、従事経験が必要ですので、ゼロからのスタートすることは出来ません。
1. 医薬品の責任者と医療機器三役の兼任
法的要件
- 医療機器等総括製造販売責任者については、薬機法施行規則第114条の49において「業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有する者」であることが明確に規定されています。
- 各責任者は、医療機器に特化した法規制(薬機法、医療機器QMS省令等)に基づいた実務能力と知識が必須となります。
職務遂行上の考慮点
- 医薬品と医療機器では、規制要件、品質管理、安全管理の重点が異なります。
- 兼任する場合、それぞれの職務を適切に遂行できる体制の構築が必要です。
- 特に医療機器等総括製造販売責任者は、医療機器の品質および安全性に関する総括的な責任を負うため、十分な時間と注力が可能な体制であることが求められます。
2. 医療機器製造販売業の種別による要件の違い
製造販売業の種別ごとの三役兼務要件
以下の表は、製造販売業の種別ごとに三役の兼務可否を示しています。表の見方としては、区分(第1種〜第3種)ごとに兼務の可否が「○」(可能)、「×」(不可)で示されています。
区分 | 総責と品責の兼務 | 総責と安責の兼務 | 品責と安責の兼務 | 三役同時兼務 |
第1種 | × | × | × | × |
第2種 | ○ | ○ | ○ | ○ |
第3種 | ○ | ○ | ○ | ○ |
注意事項:
- 第1種では、三役それぞれを別の者が担当する必要があります。
- 第2種・第3種では兼務が可能ですが、業務を適切に遂行できる体制が必要です。
- いずれの場合も、その他の業務との兼務については、業務に支障をきたさない範囲で可能です。
製造販売業の種別ごとの品質保証責任者の要件
区分 | 実務経験要件 | 学歴要件 | その他の要件 |
第1種 | 品質管理業務その他これに類する業務に3年以上従事 | なし | - 品質管理業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有すること- 医療機器の品質管理に関する教育訓練を受けていること |
第2種 | 品質管理業務その他これに類する業務に3年以上従事 | なし | - 品質管理業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有すること- 医療機器の品質管理に関する教育訓練を受けていること |
第3種 | 品質管理業務その他これに類する業務に3年以上従事 | なし | - 品質管理業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有すること- 医療機器の品質管理に関する教育訓練を受けていること |
3. 各責任者の要件
総括製造販売責任者の要件
薬機法施行規則第114条の49により、以下のいずれかの要件を満たす必要があります:
- 以下の条件をすべて満たす者:
- 大学等で物理学、化学、生物学、工学等の専門課程を修了
- 3年以上の医療機器の品質管理又は製造販売後安全管理に関する業務経験
- 以下の条件をすべて満たす者:
- 高校又は旧制中学を卒業
- 5年以上の医療機器の品質管理又は製造販売後安全管理に関する業務経験
- 上記と同等以上の知識経験を有する者
品質保証責任者(品責)の要件
QMS省令第72条により、以下の要件を満たす必要があります:
- 品質管理業務その他これに類する業務に3年以上従事した者であること
- 品質管理業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有する者であること
実務経験として認められる業務:
- 製造所における品質管理業務
- 製造販売業における品質保証業務
- 品質システムの構築・運用に関する業務
- 製品の品質評価に関する業務
補足事項:
- 3年以上の従事経験は、必ずしも連続している必要はありません。
- 医療機器以外の品質管理経験も含めて評価することが可能です。
4. 教育訓練
- QMS省令第23条に基づき、製造販売業者等は製品の品質に影響を及ぼす業務に従事する全ての職員に対して、適切な教育訓練を計画・実施する必要があります。
- 教育訓練は実務経験の代替ではなく、必要な実務経験を持つ者に対する追加的な要件として位置付けられます。
- 教育訓練の内容と記録は適切に管理・保管する必要があります。
教育訓練の具体例:
- 外部の医療機器QMS関連セミナーの受講
- 医療機器製造販売業者の品質管理に関するeラーニングプログラム
- 社内研修での医療機器関連規制や実務の学習
5. 品責と三役の兼任における留意点
法的な観点
- 品責と三役の兼任は製造販売業の種別に応じて可否が定められています。
- 兼任が認められる場合でも、それぞれの職務を適切に遂行できることが前提となります。
- 品質保証責任者としての独立性が確保される必要があります。
実務的な観点
- 業務量と責任の範囲を考慮し、適切な業務遂行が可能か評価が必要です。
- 特に製造所の規模や取扱製品の複雑性に応じて、兼任の適切性を判断する必要があります。
管理体制の観点
- 品質管理監督システムの独立性と実効性が確保される必要があります。
- 利益相反が生じない体制の構築が求められます。
6. 運用上の留意点
基本的な確認事項
- 各責任者の要件適合性を確実に確認すること。
- 教育訓練プログラムを体系的に整備すること。
- 必要に応じて規制当局への相談を検討すること。
実務経験の評価
- 実務経験の内容が要件に合致しているか精査すること。
- 経験期間の証明が可能な記録を保管すること。
教育訓練の実施
- 計画的な教育訓練の実施と記録の保管。
- 定期的な知識・スキルの評価と更新。
「医療機器の実務経験がないのであれば、三役とも兼務不可」なのではなく、そもそも実務経験がなければ兼務はおろか総責や品責、安責(第1種医療機器製造販売業者のみ)にはなれないということです。
総責:医療機器の品質管理または製造販売後安全管理の実務経験が必須(大卒3年以上/高卒5年以上)
品責:品質管理業務その他これに類する業務の3年以上の経験(医療機器に限定されない)
安責:製造販売後安全管理に関する業務その他これに類する業務の3年以上の経験(第1種医療機器製造販売業者の場合)
医薬品・医療機器間での三役の兼務について
実務経験要件を満たしていることが前提
それぞれの業務を適正かつ円滑に遂行できる体制であることが必要
特に第1種製造販売業の場合、医療機器の三役間での兼務は不可
重要な留意点
単に実務経験年数だけでなく、その職務を適切に遂行できる能力が求められます
業務量や製品の特性を考慮し、実質的に両方の職務を全うできる体制であることが必要です
教育訓練は実務経験とは別に必要な要件となります
したがって、結論としては、
「医薬品・医療機器間での三役の兼務は、それぞれの法令で定められた実務経験要件を満たし、かつ実質的に両方の職務を適切に遂行できる体制が整っている場合に限り可能」です。