一般医療機器(クラスⅠ)のユーザビリティエンジニアリング要件について
結論
はい、必要です。
一般医療機器(クラスⅠ)であっても、基本要件基準第9条第4項への適合性を示すために、ユーザビリティエンジニアリングの実施と記録作成が必要となります。
根拠となる規制要件
1. 基本要件基準の適用範囲
基本要件基準第9条第4項(使用環境に対する配慮)において、ユーザビリティに関連する条項が規定されています:
第9条第4項
医療機器は、その使用に当たって患者、使用者及び第三者(医療機器の使用に当たって次の各号に掲げる危険性がある者に限る。)に生じる次の各号に掲げる危険性が、合理的かつ適切に除去又は低減されるように設計及び製造されなければならない。
- 第1号: 物理的及び人間工学的特性に関連した傷害の危険性
- 第2号: 医療機器の意図された使用目的における人間工学的特性、人的要因及びその使用環境に起因した誤使用の危険性
これらの条項はクラス分類に関わらず、すべての医療機器に適用されます。
その他の関連条項
ユーザビリティに関連する内容が含まれる条項として、医療機器の特性によっては以下も該当します:
- 第10条第4項、第5項(測定機能に対する配慮)
- 第15条第3項(エネルギー供給)
- 第16条(一般使用者が使用することを意図した医療機器に対する配慮)
- 第17条(添付文書等)
2. 2024年4月1日からの要求事項
根拠通知:
- 令和4年9月30日付け 薬生機審発0930第1号・薬生監麻発0930第1号
- 正式名称:「医療機器のユーザビリティエンジニアリングに係る要求事項に関する日本産業規格の改正の取扱いについて」
要求事項の内容:
体制整備の期限
- 令和6年3月31日(2024年3月31日)まで: 改正後のJIS T 62366-1:2022への適合の確認を行う体制を整備すること
適用開始日
- 令和6年4月1日(2024年4月1日)以降: 製造販売される医療機器に対して、改正後のJIS T 62366-1:2022への適合をもって、基本要件基準第9条、第16条等で規定するユーザビリティに係る事項への適合の確認を行うこと
この要求は医療機器のクラス分類による除外規定はありません。
3. 一般医療機器も対象であることの明記
以下の公式資料において、一般医療機器(クラスⅠ)も対象であることが明確にされています:
PMDA公式資料より:
- 「対象は医療機器全般であることにも注意する」
- JIS T 62366-1の適用範囲は医療機器のクラス分類を問わない
PMDA公式セミナー動画(2024年3月公開)より:
- 「令和6年4月1日以降、全ての医療機器において、当該JISに適合することが求められます」
したがって、一般医療機器(クラスⅠ)についても同様に確認が必要です。
実施すべき内容
クラスⅠの一般医療機器であっても、以下の対応が必要となります:
1. ユーザビリティエンジニアリングプロセスの実施
- JIS T 62366-1:2022に基づくプロセスの適用
- 箇条5(1~5.9)の要求事項への適合
- 1 使用仕様の作成
- 2 ユーザーグループ及び使用環境の特定並びに記述
- 3 ユーザーインターフェイスに関連するハザード及びハザード関連使用シナリオの特定
- 4 危害の原因となり得る使用シナリオの選定及び記述
- 5 ユーザーインターフェイス仕様の作成
- 6 ユーザーインターフェイスの設計、実装及び形成的評価
- 7 ユーザビリティ妥当性確認試験の実施
- 8 使用関連リスク分析における未確定の結果を生じる使用シナリオの評価
- 9 ユーザビリティエンジニアリングに係る出荷後製造後の監視への情報収集
2. 記録の作成・保管
- ユーザビリティエンジニアリングファイルの作成
- ユーザビリティエンジニアリングプロセスによって作成した記録や文書の保管
- 他の文書又はファイルの一部分として保管することも可能
3. 基本要件適合性チェックリストへの記載
承認申請・認証申請・届出時の添付資料において:
- 基本要件基準第9条第4項第1号、第2号に対して、JIS T 62366-1への適合を示す
- 設計検証及び妥当性確認文書の概要の項目に以下を記載:
- 参照した規格(例:JIS T 62366-1:2022)
- 評価の概要を簡潔に記載
記載例:
JIS T 62366-1:2022に基づきユーザビリティエンジニアリングプロセスを実施し、ユーザビリティ妥当性確認試験により、安全に関連するユーザーインターフェイス要素について使用エラーが観察されないことを確認した。
4. QMS体制の整備
- ユーザビリティに係る事項への適合確認を行う体制の構築
- リスクマネジメント(JIS T 14971)を含む製品実現や設計開発に係る手順書の改訂
- QMS省令で規定する「使用性」に関し、改正後のJIS等に適合するための体制整備
参考情報
代替規格の使用
JIS T 62366-1以外にも、その適切性を説明できる国際的に認められている規格又は日本産業規格があれば、それを用いて差し支えありません。
使用可能な代替規格の例:
- IEC 62366-1:2015及びAmendment1:2020
- JIS T 60601-1-6:2023(ただし、要求事項はJIS T 62366-1が引用されている)
既存品への対応
既に市場に流通している医療機器で、改正後のJISに基づくユーザビリティエンジニアリングプロセスを実施していない場合:
- 附属書C「開発過程が不明なユーザーインターフェイス(UOUP)の評価」を活用することが可能
- UOUPとして評価し、必要に応じてユーザビリティ妥当性確認試験を実施
重要な補足事項
ユーザビリティに影響しない変更について
以下のような明らかにユーザビリティに影響しない変更の場合は、記載不要:
- 製造所迅速一変
- 有効期間延長等
ただし、これら以外の変更については、当該変更によりユーザビリティに影響がないことを承認(認証)申請書添付資料において説明する必要があります。
関連通知の整理
医療機器の基本要件基準に関する主要通知を整理すると:
| 通知日 | 通知番号 | 対象 | 基本要件基準 |
| 令和4年9月30日 | 薬生機審発0930第1号・薬生監麻発0930第1号 | ユーザビリティ | 第9条第4項等 |
| 令和5年5月23日 | 薬生機審発0523第1号 | サイバーセキュリティ | 第12条第3項 |
※これらは異なる要件であり、それぞれ対応が必要です。
まとめ
結論の再確認
一般医療機器(クラスⅠ)であっても、基本要件基準第9条第4項への適合性を示すために、ユーザビリティエンジニアリングの実施と記録作成が必要です。
対応のポイント
- ✅ 体制整備: 2024年3月31日までに体制を整備(既に経過)
- ✅ プロセス実施: JIS T 62366-1:2022に基づくプロセスの実施
- ✅ 記録作成: ユーザビリティエンジニアリングファイルの作成・保管
- ✅ 申請時対応: 基本要件適合性チェックリストへの適切な記載
参考資料
- PMDA「医療機器のユーザビリティについて」 https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/devices/0050.html
- 基本要件基準(平成17年厚生労働省告示第122号)
- JIS T 62366-1:2022「医療機器-第1部:ユーザビリティエンジニアリングの医療機器への適用」