医薬品製造におけるDCS運用に関する共通IDとパスワード使用のFDA査察リスク

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Katsuhiro Yasako
4月 24, 2025 09:41 AM 1 Answers データインテグリティ
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データインテグリティの観点から、以下の運用がFDA査察で指摘されるリスクがあるかお伺いします。

私たちの医薬品原薬を製造するプラントでは、某国内有名メーカーのDCS(分散制御システム)を使用しています。

作業現場では複数人が作業するため、DCSの端末に共通のWindows IDとパスワードを使ってログインします。

その日最初にアプリケーションを使用する作業者Aが自身のIDとパスワードでログインし、作業結果を入力します。

次に、同じ端末で作業者Bが確認結果を入力する際、作業者Aのログイン状態のまま、作業者Bが自身のIDとパスワードを入力し、確認結果を入力します。

このようにWindowsは共通IDとパスワード、さらに作業者Aがアプリケーションにログインした状態で作業者Bが情報を入力することは、FDA査察において問題視される可能性があるでしょうか?

設備の仕様上、このような運用となっています。

 

ご助言いただけますと幸いです。

よろしくお願いいたします。

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Edit 4月 25, 2025
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FDAのデータインテグリティの観点から見て、ご質問いただいた運用方法にはいくつかの問題点があり、査察で指摘されるリスクがあると考えられます。

現在の運用で懸念される点は以下の通りです。

  1. 共通のWindows IDとパスワードの使用 - FDA(および他の規制当局)は、個人アカウントの使用を強く推奨しており、共有アカウントは原則として認められていません
  2. 別のユーザーのログイン状態での操作 - 作業者AのアカウントでログインしたままAでない作業者Bがデータを入力することは、データの帰属性と責任の所在が不明確になるため、FDAのCAPA(是正措置および予防措置)の対象となる可能性が高いです
  3. 電子記録の信頼性 - このような運用では、誰がいつどのようなデータを入力したのかを正確に追跡することができず、21 CFR Part 11(電子記録・電子署名に関する規制)に違反する可能性があります

FDAのデータインテグリティに関するガイダンス(ALCOA+原則)に基づくと、データは以下の要件を満たす必要があります。

  • Attributable(帰属性):誰が作成したか明確であること
  • Legible(判読可能):明確に読めること
  • Contemporaneous(同時性):データ生成時に記録されること
  • Original(原本性):原本または信頼性の高い複製であること
  • Accurate(正確性):エラーがないこと
  • Complete(完全性)
  • Consistent(一貫性)
  • Enduring(永続性)
  • Available(利用可能性)

現在の運用方法では、特に「帰属性」の面で大きな問題があります。

対策としては、

  1. 各作業者に個別のWindows IDとアプリケーションIDを付与し、パスワードも個別化する
  2. 操作ごとに適切なログイン/ログアウトを行う手順を確立する
  3. もし設備の仕様上の制約があるなら、それを文書化し、リスク評価を行った上で、代替コントロール(例:紙の記録による二次確認や監査証跡)を実装することが考えられます

このような改善を行わない場合、FDA査察で483フォーム(査察観察事項報告書)での指摘を受ける可能性が高いと考えられます。

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