修理業許可が必要な医療機器とは
医療機器の修理業許可が必要となるのは、次の2つの条件のいずれかに該当する場合です。
1. 特定保守管理医療機器
これは、保守点検、修理その他の管理に専門的な知識及び技能を必要とする医療機器として厚生労働大臣が指定したものです。例えば、人工呼吸器、放射線治療装置、MRI装置など、高度な医療機器が該当します。
2. 修理区分が定められている医療機器
薬機法施行規則では、医療機器の修理を18の区分(特定保守管理医療機器で9区分、それ以外で9区分)に分類しています。この修理区分が定められている医療機器については、該当する区分の修理業許可が必要となります。
体成分分析装置の事例
ここで、具体例として「体成分分析装置」を見てみましょう。この装置は、人体の体脂肪率や筋肉量などを測定する医療機器です。
体成分分析装置の分類
- クラス分類:クラスⅡ(管理医療機器)
- 特定保守管理医療機器:非該当
- 修理区分:「-」(修理区分が定められていない)
このように、体成分分析装置は修理区分が定められておらず、かつ特定保守管理医療機器でもないため、修理業許可は不要となります。これは、比較的リスクが低い医療機器については、過度な規制を避け、適切な修理サービスを提供しやすくするための制度設計です。
許可不要でも守るべきルール
修理業許可が不要だからといって、自由に修理を行って良いわけではありません。以下の点に十分注意する必要があります。
1. 製造販売業者との適切な関係構築
医療機器の製造販売業者(メーカー)は、その製品の品質や安全性に責任を負っています。無断で修理を行うと、メーカーの保証が無効になる可能性があります。事前にメーカーと相談し、推奨される修理手順や純正部品の使用について確認することが重要です。
2. 修理と製造の明確な線引き
「修理」とは、故障や破損した医療機器を本来の状態・機能に戻すことです。一方、医療機器の仕様を変更したり、新たな機能を追加したりする行為は「改造」や「製造」に該当し、薬機法違反となる可能性があります。承認・認証・届出された内容から逸脱する改変は絶対に行ってはいけません。
3. 品質と安全性の確保
修理後の医療機器が、本来の性能と安全性を維持していることを確認する責任があります。不適切な修理により医療事故が発生した場合、修理を行った者に責任が問われる可能性があります。そのため、修理作業の標準手順書を作成し、作業者への教育訓練を実施することが推奨されます。
4. 修理記録の適切な管理
修理内容、実施日時、作業者名、使用部品などを記録し、適切に保管することが重要です。これにより、万が一問題が発生した際のトレーサビリティ(追跡可能性)を確保できます。
5. 関連法令の遵守
- 廃棄物処理法:修理で発生した廃棄部品は、適切に処理する必要があります
- 個人情報保護法:医療機器に記録された患者データがある場合、その取り扱いには十分な注意が必要です
修理に含まれない作業(許可不要)
以下の作業は「修理」には該当せず、修理業許可なしに実施できます。
- 清掃:医療機器の外部・内部の清掃作業
- 校正(キャリブレーション):測定精度を維持するための調整作業
- 消耗部品の交換等の保守点検:フィルターや電池などの定期交換部品の交換
これらは日常的なメンテナンス作業として位置づけられており、医療機関のスタッフや保守サービス業者が実施することが一般的です。
修理業者の紹介・仲介ビジネスについて
興味深い点として、単に修理業者を紹介するだけの行為には修理業許可は不要です。しかし、医療機関等と直接修理契約を締結し、実際の修理作業を他社に委託する場合は、修理業許可が必要となります。つまり、契約上の責任を負うかどうかが許可の要否を分ける重要なポイントとなります。