日本では医薬品医療機器等法(薬機法)において、医療機器に関する臨床試験や臨床評価について定義が設けられています。
臨床試験(治験)について
薬機法では「治験」として定義されており、薬機法第2条第17項で規定されています。
治験とは
「この法律で「治験」とは、第十四条第三項(同条第十五項及び第十九条の二第五項において準用する場合を含む。)、第二十三条の二の五第三項(同条第十五項及び第二十三条の二の十七第五項において準用する場合を含む。)又は第二十三条の二十五第三項(同条第十一項及び第二十三条の三十七第五項において準用する場合を含む。)の規定により提出すべき資料のうち臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実施をいう。」
実際の運用においては、「医薬品や医療機器等の承認申請を目的として、法律や省令に従って実施する臨床試験」として理解されており、製造販売承認申請における資料作成のための試験実施を指しています。
医療機器の臨床評価に関する規定
医療機器の臨床評価については、以下の関連文書において規定されています。
医療機器GCP省令
「医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令」(医療機器GCP省令)が平成17年厚生労働省令第36号として制定されており、医療機器の治験実施に関する基準を定めています。この省令は医療機器の臨床試験実施における詳細な手順や要件を規定しています。
その他の関連文書
- 医療機器GCP省令のガイダンス
- 各種医療機器の承認申請ガイダンス文書
- 生物学的安全性評価に関する通知
日本とEU MDRの比較
EU MDRにおける臨床評価の定義
EU MDR(欧州医療機器規則)2017/745では、臨床評価を「製造業者が意図したとおりに使用された場合の機器の安全性と性能(臨床的利点を含む)を検証するために、機器に関する臨床データを継続的に生成、収集、分析、評価するための体系的かつ計画的なプロセス」と定義しています。
主な相違点
法的枠組みの違い
- 日本:薬機法に基づく治験中心のアプローチで、承認申請時の臨床試験成績重視
- EU:医療機器のライフサイクル全体を通じた継続的な臨床評価プロセス
臨床評価の範囲:
- 日本:主に承認申請時の臨床試験データに焦点
- EU:市販後も含む継続的な臨床データ収集・評価が必須
実施要件:
- 日本:医療機器の場合、必ずしも臨床試験が必須ではない
- EU:クラスIII機器や埋込み型機器では原則として臨床試験が必要
まとめ
日本では薬機法において医療機器の臨床試験(治験)および臨床評価について明確に定義されていますが、EU MDRとは法的枠組みや具体的なアプローチが大きく異なります。特に、日本が承認申請時の臨床試験成績を重視するのに対し、EUは医療機器のライフサイクル全体を通じた継続的な臨床評価を求めている点が重要な違いです。
日欧間での医療機器開発を行う場合は、両方の規制要件を詳細に比較検討し、それぞれの要求事項を満たす戦略を策定することが重要です。