医療機器に関する品質情報の取扱い

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スガ
10月 29, 2025 11:10 AM 1 Answers 医療機器規制全般
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製造販売している医療機器(クラス2)の出荷後に発生した苦情や不具合の情報について、製造販売業者としてどこまで書類作成が必要か、繰返し発生する不具合の対応も含めて基準や気を付けておくべき法令等があれば教えてください。

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クラスⅡ医療機器の苦情・不具合対応における書類作成要件

必須となる書類作成の範囲

1. QMS省令(第55条の2)に基づく苦情処理記録

全ての苦情について記録作成が必要です。苦情は製品の品質、耐久性、信頼性、ユーザビリティ、安全性、性能に関する申し立て全てを含む広い概念です。

必須作成書類:

  • 苦情受付記録(日時、報告者、内容の詳細)
  • 苦情評価・分類記録
  • 調査結果記録
  • 調査を実施しない場合の理由の文書化(特に重要)
  • 実施した修正・是正措置の記録
  • 関係部門との情報交換記録

2. GVP省令に基づく安全管理情報の記録

第二種医療機器製造販売業者は、GVP省令第13条で定められた体制により、第14条の準用規定に基づいて以下の記録作成が必要です:

  • 安全管理情報収集記録
  • 安全管理情報の検討記録(因果関係、重篤性、新規性の評価)
  • 安全確保措置の実施記録

重要な区別:QMS省令の「苦情」とGVP省令・薬機法の「不具合」は異なる概念です。苦情はより広い概念で、必ずしも不具合報告に該当しないものも含まれます。

不具合等報告(薬機法第68条の10)

PMDAへの報告期限:

  • 15日以内:死亡・重篤な健康被害(予測不能)、外国での製造中止等の措置
  • 30日以内:重篤な健康被害のおそれ、保健衛生上の危害のおそれがある不具合
  • 定期報告:承認日から1年ごと、期間満了後2か月以内

注意点:期限内に調査が完了しない場合は、その時点での調査結果と理由を報告し、完了後に必ず完了報告を提出する必要があります。

繰返し発生する不具合への対応(CAPA)

データ分析(QMS省令第61条)

QMS省令第61条により、統計的データ分析の手順文書化が義務付けられています:

  • 苦情の主要原因を特定する統計的要約の作成
  • 発生頻度の分析と傾向の監視
  • 閾値は各社がリスクベースで独自に設定(法令で具体的数値は規定されていません)

CAPAプロセス(QMS省令第63条・64条)

是正措置(第63条):検知された不適合の再発防止 予防措置(第64条):潜在的不適合の発生防止

必要な文書化:

  1. 根本原因分析の記録(RCA、FMEA、FTA等)
  2. リスク分類と影響評価の記録
  3. 是正措置・予防措置の計画と実施記録
  4. 有効性評価の記録
  5. 類似製品や関連工程への展開の検討記録

市場での対応措置

日本の法令における対応:

  • 薬機法に基づく回収制度
  • QMS省令第60条の3(出荷後の不適合製品の処理)
  • 不具合等報告制度

回収のクラス分類(医療機器自体のクラス分類とは別):

  • クラスⅠ:重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る
  • クラスⅡ:一時的又は治癒可能な健康被害
  • クラスⅢ:健康被害の原因となるとはまず考えられない

※FSCA(Field Safety Corrective Action)やFSN(Field Safety Notice)は国際的な用語であり、日本では上記の制度が対応します。

記録の保管期間(QMS省令第68条)

クラスⅡ医療機器の多くは:

  • 基本保管期間:有効期間+5年(有効期間+1年が5年より長い場合はその期間)
  • 教育訓練記録:5年間
  • 廃止文書も同様の期間保管が必要

実務上の重要ポイント

1. QMSとGVPの連携

QMS省令第55条の2第3項により、品質管理責任者と安全管理責任者間の情報共有が義務付けられています。

2. データベース管理の推奨

  • 製品別、ロット別、事象別の検索・集計機能
  • 発生傾向の監視システム
  • 報告期限の管理
  • CAPA進捗の追跡

3. ライフサイクル全体での義務

製造販売中止後も、製品の耐用年数全体を通じて不具合情報の収集・報告義務が継続します。

これらの体系的な文書管理により、法令遵守と患者安全の確保、そしてPMDA査察等への適切な対応が可能となります。

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