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DHFの管理方法

https://qmsdoc.com/product/md-qms-358/
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DHFの原則

今回はDHFの管理方法について解説したい。なぜならば、ほとんどの医療機器企業はDHFの管理方法を間違っているためである。

筆者が経験してきたほとんどの医療機器企業では、設計文書毎にバインダーに綴じていることが多い。この管理方法は間違いである。

なぜDHFが必要か

FDAの21 CFR 820 QSRでは、設計管理においてDHF(Design History File)の作成を要求している。ISO 13485においては、設計開発ファイルと称されている。

DHFはその名が示す通り、設計の履歴をファイリングしたものである。

なぜDHFが必要かというと、同一製品であっても5年前に出荷したものと、3年前に出荷したものと、現在出荷しているものでは、設計が変更になっていることがあるからである。

例えば、故障によって修理依頼があったとしよう。もし5年前に出荷した製品であった場合、当時の設計文書一式がすみやかに取り出せなければ、故障の原因を調査することが困難になってしまうだろう。

このようにDHFは、設計の変更毎に当時の設計文書すべてについて、横串を刺してファイリングしておくことが必要である。つまり、その当時の最新の設計文書についてスナップショットを撮っておくイメージである。

FDAが要求するDHFの管理方法

下記にFDA QSRにおけるDHFの文書化要求を記載する。

820.30 設計管理

(e) 設計審査(デザイン・レビュ)

各製造業者は手順を確立し維持し、設計結果を正式に文書化した設計審査が、機器の開発の適切な段階において、計画され実施されることを保証すること。この手続きは、各々の設計審査の参加者に次の者が含まれることを確実にすること。すなわち審査される設計段階に関するすべての機能の代表者、審査される設計段階に直接責任を持たない者(一人または複数)、および必要ならば専門家である。設計審査の結果、例えば設計、日付および審査をした者(一人または複数)を特定するものを設計履歴ファイル(DHF)に文書化すること。

(f) 設計検証

各製造業者は手順を確立し維持し、機器設計を検証すること。設計検証は、設計からのアウトプットが設計へのインプットの要求事項を満たすことを確認すること。設計検証の結果、例えば設計方法、日付および検証をした者(一人または複数)を特定するものを設計履歴ファイル(DHF)に文書化すること。

(g) 設計の妥当性確認

各製造業者は、手順を確立し維持し、設計の妥当性確認をすること。設計の妥当性確認は、定義された運用手順の下で、初期製造のユニット、ロット、またはバッチまたはそれと同様な対象に対して行う。設計の妥当性確認は、機器が定義された使用者のニーズおよび意図された用途に適合することを保証し、実際のまたは模擬した使用条件下での製造ユニットの試験を含むこと。設計の妥当性確認は、適切な場合はソフトウェアの妥当性確認および危険分析を含むこと。設計の妥当性確認の結果、例えば設計方法、日付および妥当性確認をした者(一人または複数)を特定するものを設計履歴ファイル(DHF)に文書化すること。

つまりFDA QSRにおいて、DHFに文書化しておかなければならない設計文書は以下の3つである。

  1. 設計審査(Design Review)の結果
  2. 設計検証(Design Verification)の結果
  3. 設計の妥当性確認(Design Validation)の結果

ただし、多くの医療機器企業においては、設計検証(Design Verification)や設計の妥当性確認(Design Validation)の結果は、必ず設計審査(デザイン・レビュ)にインプットされていることであろう。

つまり、FDA QSRの要求では、デザインレビュの結果をDHFにファイリングしておくことであると理解できる。

ある製品において、DR0⇒DR1⇒DR2⇒DR3といったように設計審査が進められていくことだろう。

DHFでは、設計審査(デザイン・レビュ)にかけられたすべての設計文書とその結果をひとまとまりにして(スナップショットを撮るイメージ)、ファイリングしておくのである。

一般にデザインレビュは、設計開発の各フェーズの終わりに設定されている(フェーズ移行するための審査である)ため、デザインレビュの結果一式をDHFにファイリングしておけば、設計管理の履歴が適切に記録されることになる。

DHFは物理的に保管しなければならない訳ではない。例えば、CADなどのデータで図面を管理している場合など、電子記録の保管場所を参照していれば構わない。

つまり、DHFは目録として管理し、設計文書は別のバインダーや電子記録として保管しておいても構わない。 重要なことは、設計開発の進捗に応じて、当時のバージョン(版)がすみやかに取り出せるようにしておかなければならない。

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