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欧米と日本の規制要件の違い

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欧米と日本の規制要件の違いについて

筆者が常に感じていることは日本の規制要件は後追い型だということである。
つまり、製薬企業、医療機器企業等の各社が遵守できるようになった状態で省令を改正することがもっぱらである。
一方、欧米の規制要件は、規制当局の期待や指導を盛り込んで発出される。
従って、発出時には各社が遵守できないとしても、数年後に適合することを期待している訳だ。
例えば、21 CFR Part11は、1997年に発出されたが、本格的な査察が開始されたのは2000年のことであった。
まずは規制当局の期待を規制要件化し、各社が遵守できた時期を見計らって査察において調査し、不遵守の場合は指摘をすることになる。
はたしてどちらが本来のあり方であろうか。

またグローバルの規制要件からのタイムラグがひどく長い。
昨年改正されたGMP省令やQMS省令が良い例であろう。
GMP省令は16年ぶりの改正である。QMS省令は、ISO 13485:2016に整合させて改正されたが、やはり5年の隔たりがある。
海外に製品を輸出する企業は、ダブルスタンダードになってしまう。また欧米基準を自らが学び実行することが求められる。

日本の省令は改正が遅いことに加えて、パブリックコメントへの回答が極めて不親切である。筆者もパブリックコメントを投稿した経験があるが、理由も書かずに「現状で問題ないと考えます」とだけの回答であった。
米国の場合は、法律でパブリックコメントへの回答は、Preumble(前文)と呼ばれる文書にして、連邦広報(Federal Register)に掲載しなければならない。
その際にパブリックコメントを受けて案をどのように変更したか、また変更しない場合はその理由(FDAの考え方)を丁寧に記載しなければならない。
パブリックコメントは慎重に検討され、長いものだとPreumble(つまりパブリックコメントへの回答)の作成に2~3年もかけることがしばしばある。
しかしながら、本邦においては形式的なパブリックコメントの募集と出来レース的な回答に終始し、案がほとんど改定されずすぐさま発行してしまうのが通例である。

さらに、改正が遅いわりに、改正施行までの移行期間が短い。例えば、今般のGMP省令の場合、大改正であったにもかかわらず、移行期間がたったの4か月弱しかなかった。

また、日本の規制要件はややこしい。省令以外に施行通知(逐条解説)、課長通知、事務連絡(Q&A)などが発出される。省令を読むだけでは理解できないことや、遵守しなければならない事項が逐条解説やQ&A週に記載されていることも多々存在する。
しかも、逐条解説において、PIC/Sガイドラインを参考にすることと記載されていることがしばしば見かけられる。
本来、PIS/SはICHとは異なり、規制当局の集まりである。各国の規制当局がPIC/Sガイドラインに従って、自国の規制要件を作成しなければならない。
しかしながら、例えば、データインテグリティに関するガイドラインなど、厚労省が発出していない重要なグローバルの要求事項が存在しており、製薬企業に対してPIC/Sガイドラインを参照することとしている。
そのようなことで果たして国内でデータインテグリティ査察が実施できるのであろうか。

データインテグリティやリスクベースドアプローチなど、先進的な概念は海外の規制当局が立案したものばかりで、残念ながら日本がオリジナルとなるものはほとんど見当たらない。
医薬品消費大国で三極の一極を担う日本の規制のあり方に疑問を呈したい。

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