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医療機器の設計・開発・申請における規制要件入門 ~品質、有効性及び安全性の確保~ 2講 医療機器の種類

https://qmsdoc.com/product/md-qms-358/
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薬機法の対象となるもの

薬機法の対象となるものは、下に示す、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品の5つである。
①医薬品
・日本薬局方に納められているもの
・病気やケガの「治療」に用いられるもの
・「予防」に用いられるもの
・人の身体の構造又は、機能に影響を及ぼすもの

②医薬部外品
・人体に対する作用が緩和なもの 例)栄養ドリンク、染毛剤、デオドラント剤

③化粧品
・人の身体を清潔にするもの         例)石鹸、歯磨き粉
・美化し、魅力を増し、容貌を変えるもの    例)一般的な化粧品、香水
・人の皮膚もしくは、毛髪を健やかに保つもの  例)スキンケア用品、毛髪用剤

④医療機器
・人若しくは動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されるもの
・人若しくは、動物の身体の構造若しくは、機能に影響を及ぼすことが目的とされているもの

⑤再生医療等製品
・iPS細胞を利用した細胞シートやヒト細胞に遺伝子導入した医薬品など

特に日本が世界に誇るIPS細胞などを用いた再生医療等製品が2014年の薬機法の改正で薬機法の対象に加わった。
医療機器と計測機器類と健康介護機器類は、非常によく似ていて紛らわしい。
また日米欧、それぞれの国によって医療機器になるか健康介護機器になるかなど、規制が異なるので、申請する国の規制をよく調査することが必要である。

医療機器、計測機器類、健康介護機器類について

日本における医療機器とは以下のようなものである。
・歯科材料              ・体外診断用機器
・コンタクトレンズ  ・血圧計
・眼鏡         ・注射器
・補聴器        ・体温計
・家庭用マッサージ機

日本の場合は特にこの体外診断機器がかなり進歩しており、世界の市場を占めている。
その体外診断用機器に使用する体外診断用医薬品は、医薬品とは呼んではいるが医療機器に含まれている。
電子血圧計、電子体温計は、電気用機器(ME機器)と呼ばれる範疇の医療機器になっている。

計測機器類とは以下のようなものがある。
・体重計
・運動量計
・気体液体分析計

また、健康介護機器類とは以下のようなものがある。
・車いす              ・杖
・電動ベッド            ・電動歯ブラシ
・コルセット            ・空気清浄機

それぞれ規制が違うので注意が必要である。また、国によっても規制が異なる。

見た目や構造が同じでも医療機器ではないこともあるので、設計開発の前に、PMDAに医療機器に相当するのか否かの相談することを推奨する。

医療機器(Medical Devices)の定義

「人または動物の診断、疾病の診断治療、予防に使用するか、または身体の構造もしくは機能に影響を及ぼすことが目的」とされているものである。

例えば、コンタクトレンズ、マッサージ機、メス、体温計、心臓ペースメーカー、放射線治療装置、CT、レントゲン装置、ピンセットなどが対象になる。

医療機器は30万種類から60万種類あるとも言われている。その30万から60万種類もの医療機器を一つの規制要件で規制するということには無理がある。よってQMS省令等においては、どの医療機器にも共通するような一般的な要求事項だけが書かれている。
後は各社がその製品のリスクに応じて、その機器の特性によって品質をマネジメントし、文書にし、当局または認証機関の審査で合格しなければならないのである。

医療行為と医療機器

医療行為には、①予防(検査)、②診断、③治療、④リハビリ、の4つの段階がある。
薬機法における一般名称は4,000種類以上(品目数で30万品目以上)ある 。
医療行為の段階と医療機器の例は、それぞれ以下の通りである。

① 予防(検査)に使われるもの
・心電図
・血圧計
・血液検査装置

② 診断に使われるもの
・内視鏡
・レントゲン装置
・超音波診断装置
・X線―CT
・MRI
・PET

③ 治療に使われるもの
・レーザーメス
・ペースメーカー
・人工心臓
・人工心肺装置
・人工透析
・人工骨

④ リハビリに使われるもの
・自動牽引装置
・マイクロ波治療器
・マッサージ機

日本は、予防と診断の医療機器は非常に強いが、治療に関しては海外勢に押されて輸入超過の状況が続いている。
日本の企業が、治療用の医療機器に弱い要因にリスクがある。
治療用の医療機器は、患者とユーザー(医師、看護師、検査技師などの医療従事者)
の方々に対する健康被害のリスクが極めて高いので、風評被害等を恐れて、日本の企業では治療装置に手が出せていないのが現状である。

医用電気機器(ME機器)とは何か

医用電気機器(ME機器)は、下記の通り定義されている。

「医用電気機器の定義
医用電気機器(ME機器)とは、装着部を持つか、患者との間でエネルギーを授受するか、又は患者に与えるか若しくは患者のエネルギーを検出する機能を有し、
①患者の診断、治療又は監視、
②疾病、負傷又は障害の補助若しくは緩和することを意図した機器」

家庭で利用する電子血圧計とか電子体温計などを、専門的には医用電気機器(ME機器)という。医用電気機器(ME機器)は、メカ、エレキ(電子回路)、ソフトウェア等、少なくとも3つ以上のパートからできている。
メカ設計、エレキ設計、ソフトウェア設計の各担当者が、デザインレビューで設計審査を通して、お互いの組み合わせで串刺しをして、有効性があり、安全性があることを証明しなければならない。

なおソフトウェアに関しては、別にIEC-62304という規格への準拠が必要である。
米国FDAの場合は、IEC-62304と並んで1987年にGeneral principle OF software validation  (GPSV : ソフトウェアのバリデーションの原則)というガイダンスを発行し2001年に改定されている。

メカの要求、エレキの要求、ソフトウェアの要求、それぞれに必要な規制要件を調べて、それらに準拠して設計開発を行い、申請をする必要がある。

デジタルセラピューティクス(DTx)とは何か

昨今ハードウェアを伴うような医療機器だけではなく、「デジタルセラピューティクス」(Digital Therapeutics:DTx、デジタル治療)(以下DTx)という新たな医療機器が開発されている。
これは、ソフトウェア単体で動く医療機器のことで、すでに実用化されている。
・DTxの6つの特徴

①単独利用あるいは付加的利用によって治療アウトカムが向上するソフトウェアによる治療のことをいう。
②米国では既にいくつか実用化されている。
③DTxはここ数年で誕生した新規の製品である。
④患者や医師にとって治療の選択肢が増える。
⑤産業界では、DTxを開発する新興ベンチャーが増加している。
⑥製薬企業にとっては医薬品以外の収益源になる可能性がある。

単独利用というのは、そのソフトウェアそのもので治療をするということ、付加的利用というのは、医療機器と併用して利用する、または実際に治療する医薬品の使用に対して付加的に利用するソフトウェアのことで、病気の症状が改善する、治療アウトカム(転帰)を向上させる、ソフトウェアによる治療ということである。

既に先行する米国ではいくつか実用化されている。
日本でも2014年の法改正以降、ソフトウェアであっても医療機器として認められるようになった。米国や諸外国でもソフトウェア単体で、医療機器として認められるようになっており、DTxと呼ばれる医療機器ソフトウェアというものが多く開発されている。

ここ数年で非常に多くのDTxと呼ばれる医療機器ソフトウェアが発売されている。
DTx推進の立役者は、なんといってもスマホの台頭である。
家庭用のパソコンでしか動かなかったアプリケーションが、スマホで動くようになり、医師と双方向でコミュニケーションすることが可能となり一気に広がりを見せている。

このソフトウェアの開発というのはそもそも資本がそれほど必要ではない。人数も必要ない。多くのスタートアップ企業、大学発のベンチャー企業、今多くの製薬企業でもこれまでのように何百億円もかけて新薬を開発して特許期間切れたらまた次の新薬に投資するというように、いちかばちかのような世界ではなく、このソフトウェアによって治療を進めていこうということで、大手の製薬メーカーの多くがこのDTxの世界に参入している。

いくつか事例を紹介する。
米国のWellDoc社が発売した「Bluestar」という2型糖尿病患者向けの治療補助アプリは、2010年に米国FDA(Food and Drug Administration/米国食品医薬品局)の認証を得たことで注目を集めるようになった。
しかしこれには先行品があり、先行品はパソコンでしか動かなかったのが、「Bluestar」はスマホで動くということで非常に注目を浴び、その使用価値というのも格段に上がったのである。

DTxの先駆け:「処方されるアプリ」 Bluestar (WellDoc社)の例

「Bluestar」は2型糖尿病の自己管理を補助するための「処方されるアプリ」で、誰でも使えるというわけではなく、医師が処方し、処方箋の代わりに解除キーを発行し、患者は解除キーを入力しなければ使用することができないようになっていることから「処方されるアプリ」と呼ばれる。

・BlueStarの機能
 ・患者が自宅で血糖値を記録
 ・入力情報をもとに、適切なタイミングで疾患指導や生活習慣・モチベーション維持に関するアドバイスを表示
 ・アプリ上での専門家への質問
 ・薬物療法や食事療法、運動療法といった血糖コントロールの方法の学習
 ・医師向けには診断サポートシステム
 ・毎回の診察前の血糖値や服薬・体調の記録、進行状況のレポートの医療チームへの提供

「Bluestar」は、患者の血糖値の入力情報や記録に対して、適切なタイミングで疾患の指導とか生活習慣モチベーション維持に関するアドバイスを表示することができる。またこのアプリを通して専門家に質問をすることもできる。
医師にとっても診断のサポートになり、忙しい医師にとって空いた時間に患者の経時変化を見て、場合によってはなんらかの指導をする、所見を記載する、メッセージを送るということができる。
この「Bluestar」は、大規模な臨床試験において糖尿病新薬などの医療医薬品と同等以上の効果があったという結果が得られ、2010年に米国FDAからの承認を取得した。

「治療のために処方される世界初のDTx」 reSET(Pear Therapeutics社)の例

一方で、治療のために処方される世界初のDTxでreSETというものがある。
これは米国で問題になっている薬物乱用やアルコール依存のような依存症の治療に効果を示すものである。これは併用療法ではなく、医薬品を用いずにこのアプリだけで完治させようとするものである。例えば12週間の治療期間が設定されていて、61種類のコンテンツがある。自分の症状に関連するものや医師に巣据えられたものなど、週に4つほどのペースで進めることが推奨されている。これによって薬物依存の方に対していろんなアドバイスを与えながら、勇気づけながら、薬物から徐々に解放していくアプリになっている。

日本におけるデジタルセラピューティクス(CureApp社の禁煙アプリ)の例

・ CureApp禁煙の特徴
・日本では2014年11月、薬事法が改正されて「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」に衣替えした際、対象の医療機器に「単体プログラム(ソフトウェア)」が加えられた。それにより治療アプリが医師に処方されたり、健康保険が適用されたりする道が開けた。
・2017年10月、医療ベンチャー・キュア・アップが「ニコチン依存症治療アプリ(禁煙治療アプリ)」の治験の開始を発表。
・2019年5月30日、ニコチン依存症を治療するスマートフォン向けアプリについて、薬事承認に向けた申請を行ったと発表。治療用アプリの申請は国内初で禁煙治療向けでは世界初。2019年内にも承認が下りる見通しで、20年春の保険適用を目指す。
・国内31医療機関と臨床試験(治験)を実施し、その結果も発表した。禁煙外来による12週間の治療にアプリを併用し、6ヶ月後の禁煙継続率がどれだけ高まるかを調べた。584人のニコチン依存症患者を対象に実施。アプリを併用した患者は禁煙継続率が64%と13ポイント高まった。
・アプリはキュア・アップが慶応義塾大学医学部と共同開発。患者がたばこを吸いたい気持ちの強さなどをアプリに入力すると、「ガムをかんでください」などのアドバイスを表示する。保険適用後は通常の薬のように医療機関で患者に処方される。

この禁煙アプリは、禁煙外来へ行くことが億劫になってしまう、行っても待ち時間が長くなかなか診察してもらえない、診察してもらっても5分程度しかお話ができない、と患者は心が折れてしまうところを、通院しなくても待ち時間もなくアドバイスを受けられるところが継続につながり、このアプリを利用しない時に比べて禁煙継続率を64%と13ポイント高めた。

CureApp社の禁煙アプリは、医療機器としてのアプリと非医療機器としてのアプリの2つが作られている。医療機器というのは診断に使うとか、何らかの医師からのサジェスチョンを入力したり、患者に対してアドバイスをしたりする、という医療行為を持つものは医療機器に相当するが、例えば健康保険組合に配られているほうの禁煙アプリは、医師の画面を削除して機能を一部制限している。あくまでも自分自身の管理のためのアプリとして発売されており、2通りのアプリケーションがある。
このように医療機器としての機能を備えているのか、そうではないのかによって医療機器になったり非医療機器になったりするのでそこにも留意する必要がある。

Apple Watchの心電図計機能

筆者が新しいApple Watchに最も期待しているのは心電図機能(ECG機能)である。
ところが、今日現在日本ではまだ未対応である。
なぜかというと、この心電図は日本でも米国でもクラスIIに分類されるのだが、日本の場合は特定保守管理医療機器(検査装置)という機器分類され、検査装置は校正・キャリブレーションが必要になるからである。

日本におけるApple Watchの心電図計機能導入への障壁

特定保守管理医療機器に指定されると管理者の設置義務(3年以上の経験が必要)もでき、全ての販売するショップに経験のある管理者を置くというのは無理な話である。 しかし、今般少し規制が変わり、新しく家庭用心電計プログラム、家庭用心拍数モニタリングプログラムと言う新しい一般名称ができた。これによりApple Watchの心電図機能(ECG機能)をオンにできる日も近いのではないかと推察する。

お役立ち動画

医療機器の設計・開発・申請における規制要件入門 
 ~品質、有効性及び安全性の確保~
1講 医療機器と規制要件
▶ 2講 医療機器の種類
3講 医療機器と品質
4講 医療機器と安全性
5講 医療機器と有効性
6講 医療機器申請と当局査察

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